岩田一政氏:マイナス金利で日銀の財務は傷む

注目度:

元日銀副総裁で日本経済研究センター理事長の岩田一政氏が日銀のマイナス金利政策について語った。1)
資金供給量には限界があり、マイナス金利の下限は2%程度までと語った。

どんどん細る日銀の利ザヤ

発表当初の市場の反応が早々と巻き戻している日銀のマイナス金利導入。
岩田氏は、イールド・カーブをスムーズに引き下げた点で効果があったと評価する一方、「資金供給量の限界は、やはり存在する」と語った。
「資金供給量の限界」とは何を指しているのか。

マイナス金利導入前、日銀は市中銀行から預かる超過準備に対して0.1%の金利を支払っていた。
量的緩和政策では、日銀が市中銀行などから国債などを買い入れ、その代金が超過準備として積み上がっていた。
日銀はバランスシートを拡大すればするほど、利払い負担が増大していたのだ。
(一方、買い入れた国債の金利収入も増大したが、サヤは薄くなっていく。)

量的緩和によって市場金利は低下し、国債利回りはマイナス金利導入前でも4年ものまでマイナスになっていた。
0.1%の金利を支払いながら低リターンの資産を買い入れれば、日銀の収支はどんどん悪化していく。
つまり、+0.1%の付利が「資金供給量の限界」を生んでいた。
しかし、この限界は、付利を引き下げマイナスとすることで、とりあえずは消滅したように思える。

資金供給量の限界は存在する

日銀が無限に資金供給できると主張するのに対し、岩田氏は日銀の資金利ザヤに着目し「資金供給量の限界は、やはり存在する」と指摘する。
マイナス金利導入によって、気の遠くなるほど長いデュレーションまでマイナス金利が進んでいる。
日銀が耐えうる財務負担を考慮し、岩田氏はこう言う。

国債金利がすでに9年物国債までマイナスとなっている状況を踏まえると、日銀にとって、預金にマイナス金利を付けることによる収益よりも、長期国債をネットで年間80兆円、グロスで120兆円をマイナス金利で買うことによるロスの方が大きいはずだ。

日銀の自己資本は、各種準備金を入れてもさほど大きなものではない。
伝統的な金融政策を粛々と行う限り、それほどの資本力は必要でなかったからだ。
しかし、量的緩和政策では、日銀のバランスシートに大きな負担をかけている。

もちろん、国庫納付金を免除したり、政府からの追加出資を仰ぐこともありえよう。
しかし、あまりに頻繁に大規模にやれば、中央銀行としての信認が揺らぐだろう。
経済刺激や政府債務の負担軽減のために低金利政策を行い、それで発生した損失を政府が尻拭いする。
こんな構図と取られれば、これはまさにマネタイゼーションであり財政従属である。
その時、日銀がこれを純粋な金融政策と主張するには、その政策が格別の結果を出していることが求められよう。

現金通貨にもマイナス金利?

では、マイナス金利の限界はどこなのだろう。
岩田氏は、金庫での保管コストとの比較上、2%程度だろうと推測する。
さらに、大規模な金庫保管・タンス預金を避けるには「現金通貨にマイナス金利を付けるという、さらに進んだレジームの転換になる」と語る。
紙幣を持っていると時間とともに円建てで減価していくという話だ。

一種の新円切り替えのようでもある。
なんで、こんな極論が語られるのか。

(マイナス金利はマイナス・サム戦略)