浜町SCIコラム

オリンパス (7733) はM&Aの手数料に1件で約300億円を払った

買収の対価の話ではない。
M&Aアドバイザリーのフィーについてである。

本日の日本経済新聞の夕刊が報じた。

英紙などによると、ウッドフォード氏は同社が英ジャイラスを当時のレートで約2000億円で買収した際に「ファイナンシャルアドバイザーに約700億円という多すぎる金額を払った」と主張している。
菊川氏は「実際に払った手数料は約300億円だ」と訂正し、適正額だと語った。

今、オリンパスの経営を預かる人は、300億円を適正と言っている。

M&Aアドバイザリーのフィー・スケール

むろん、M&Aアドバイザリーのフィーの決め方は画一的なものではない。
しかし、それなりの相場感といったものがあるのも事実だ。

かつては、大型M&Aのアドバイザリーの世界では「リーマン方式」と呼ばれるようなフィー・スケールがあった。
買収の対価にして主に100百万ドル(今の相場で約76億円)以上の案件について、最高で3%程度をフィーとするものだ。
ただし、最低額を3百万ドル(今の相場で約2.3億円)程度としていた。
買収の対価が上がるにつれ実額は増えるが、料率は減らしていく。
ビッグ・ディールの時には、料率は1%ほどになっていく。

買収側からすると、買収の対価が増えることでフィーが増えるのでは、買収者とそのアドバイザーの間に利益相反が生じてしまう。
それがいやな場合は、フィーをフラットにしたり、逆に傾斜をかけたりすることもある。

かつてはびこったInvestment Bankingに潜む民間の「贈収賄」

オリンパスの支払ったフィーが適正か否かについてはわからない。
ここからは一般的な話として離そう。
おかしなフィーの行き先の可能性だ。

一つは、買収者の経営者へのキック・バックの原資となる場合。
フィーの支払先から、経営者に何らかの形でフィーが流れる。
法に触れないようにするため、退職後の(形だけの)雇用によって支払われることもある。
投資銀行のアドバイザリー部門等に事業会社のOBがいたら、それを疑って見るといい。

もう一つは、買収対象の意思決定者(経営者や株主)に流れる場合。
こちらは不明朗ではあるが、目的はまっとうに近い。
買収対象に買収を受け入れさせるために、買収対象の経営者や大株主に資金提供を行うのである。
経営者に渡れば、民間での「贈収賄」である。(買収対象側での背任になりうる。)
大株主に渡れば、株式譲受の対価に格差をつけたということになる。(その大株主と他の株主との間で民事訴訟となりうる。)
いずれの場合も、買収側の経営者が恩恵を受けていないという意味で、買収側の経営者の犯罪とは認定しにくい。
ただし、不明朗なことはなはだしい。

分野は違うが、同じInvestment Banking業務である株式等の引受業務でも、似たような不明朗なフィーが存在した。
引受を獲得するために、発行体の担当者に「賄賂」をキックバックするのである。
その方法は、リクルート事件などでも有名になったとおり、値上がり確実な未公開株を割り当てるなどだった。

日本の企業ガバナンスのピンチ

日本企業のおかしな話がいくつも出ている。
会社から巨額の借金をして返せない製紙会社の会長、貸した会社側。
第3者委員会を作っておきながら、その結果を黙殺する電力会社。
みな、体裁を整えたり、正義を主張したりするのには熱心だが、その姿は単純に見苦しい。
こういう姿が見えた時、アクティビストが懐かしくなるのは筆者だけだろうか。
悲しいかな、日本企業の株主は無力だ。

タグ:

カテゴリー: コーポレートガバナンス

関連記事:


この記事は 2011 年 10 月 18 日 火曜日 7:27 PM に コーポレートガバナンス カテゴリーに公開されました。 この記事へのコメントは RSS 2.0 フィードで購読することができます。 現在コメント、トラックバックともに受け付けておりません。

コメントは受け付けていません。