【書評】 中央銀行が終わる日 – ビットコインと通貨の未来

早稲田大学の岩村充教授による金融政策と仮想通貨についての本。
少々、看板に偽りがあるようにも思えるが、実は、看板以上の良著である。

看板とは違った意味の良書

商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。お買い物される際には、必ず商品ページの情報を確認いただきますようお願いいたします。また商品ページが削除された場合は、「最新の情報が表示できませんでした」と表示されます。販売部数を稼ぎたかったのか、センセーショナルなタイトルがついている。
読み進むにつれ、期待外れを感じるのだが、うらはらに、中身の良さに感心する。

まず、金融政策の歴史的記述や分析・解釈が平易ですぐれている。
日銀出身者だけあって、極めて正統的で安心感のある内容だ。
また、リフレ派をチクチクするようなところもあるのだが、極めて上品な書きぶりで不快に感じず楽しめる。

次に、ビットコインの概要がとてもよくかけている。
メディアの人間が書いたビットコイン解説はなんとも中身がない。
テクノロジー側の識者が書いたビットコイン解説は難解で、経済との包括的な議論が不足しがちだ。
その点、本書の書きぶりは、特に経済サイドに身を置いている人にとっては絶妙なものと言える。

デジタル銀行券が金融政策の自由度を拡げる

ネタばれになってもいけないのだが、この本のメイン・ストーリーを代弁したい。
19-20世紀のドイツ人 シルビオ・ゲゼルのアイデアをデジタル化したら、というのが主題だ。
ゲゼルはスタンプ付紙幣と呼ばれる通貨を提唱したが、これをIT技術でデジタル化したらどうなるか。
具体的に言うと、紙幣の金額が一定でなく「貨幣利子率」に応じて成長していくというものである。

金融取引では、従前どおり、市場の名目金利によって取引が決まる。
預金者はこれまで、預金をしなければ利息を受け取ることができなかった。
しかし、デジタル銀行券では銀行に預けなくとも貨幣利子率分だけは利息を得ることができる。

このわかりにくいデジタル銀行券の目的は何か。

  • 流動性の罠の克服
    市場金利には(ある程度の)ゼロ金利制約が存在するため、市場金利の代わりに貨幣利子率のマイナス化を用いる。
  • 金融政策の自由度拡大
    現在は、マネー・サプライを変化させると市場金利が変化してしまう。
    マネー・サプライに加えて貨幣利子率という変数を持てば、マネー・サプライだけを操作したり、市場金利だけを操作したりすることが可能になる。

こうしたデジタル銀行券を用い、流動性の罠から脱出しようという提言である。

デジタル銀行券を担うのは誰か

さて、本書のタイトルはなぜ『中央銀行が終わる日』なのか。
岩村教授のいうようなデジタル銀行券が実現したとして、それを流通させるのはどのようなプラットフォームなのか。
日銀ネットではあるまい。
岩村教授はそれこそ仮想通貨技術であろうと予想する。
その時、中央銀行は通貨の番人としての役割を終えることになる。

ただ、ここまでの話は、正直今のところ絵空事の域を出ない。
それゆえに、筆者からすれば、金融政策とビットコインの話が少々分離しているような印象を受ける。
重ねて言うが、本書は、2つの観点が別個のものと考えても推奨できる良書である。

参考までに紹介すると、ゼロ金利制約の打破については欧米では活発に議論されている。
質の高い絵空事が知りたいときは、ミシガン大学のMiles Kimball教授のサイトなどが役に立つ。