【メモ】日銀が示す円安の本当の理由

6月に日銀より公表されたワーキング・ペーパーに興味深いものがあった。
期間プレミアムの変動がどの程度マクロ経済に影響を及ぼすかを論じたものだが、実務家の興味に沿って別の角度から同論文を眺めてみたい。

「(日米)両国のターム・プレミアムの変動は、ドル円の為替レートを通じて日本のインフレ率に大きな影響を及ぼし得ることがわかった。
本分析結果は、日本のターム・プレミアムの低下が、為替レートの変動を通じ、日本のインフレ率をある程度押し上げていた可能性を示している一方で、それとほぼ同程度、米国のターム・プレミアムの上昇などの海外要因に影響されてきたことも示唆している。」

日銀の片桐満氏・高橋耕史氏による『ターム・プレミアムはインフレ率や実体経済に影響するのか?為替レートの変動を通じた波及について』と題する論文の結論だ。
米国の期間プレミアムが為替レートを通じて日本経済に影響を及ぼすことを示した実証研究となっている。
いまだ輸出が経済・市場の主役のように思われている日本の住人からすれば認識通りの結果とも言える。

実務家にとってこの論文が興味深いのは、長期金利・ドル円レートの変動の定量的な要因分析が示されている点だ。
論文でも指摘されているとおり、現在ドル円レートと日米長期金利差の間に相関があることはよく知られている。
投資家が強い興味を持っているこの2つの数字について、日米両面での要因を明らかにしている。
実務家として自身のバランス感覚を確認するのにおおいに役に立つので、順に見ていこう。

円長期金利の変動要因

要因分析では2009-11年のデフレの時代と2013年以降のアベノミクスの時代で傾向がはっきりと分かれている。

10年債利回り変動の累積要因分析
10年債利回り変動の累積要因分析

デフレの時代は期間プレミアムは上昇したものの、トレンド・インフレ(つまりデフレ)の要因が大きく長期金利は低下した。
アベノミクスでは金融政策(期間プレミアム+短期金利)のほか、海外要因(主に米国の要因)が長期金利低下に寄与している。

10年債利回り変動の累積海外要因分析
10年債利回り変動の累積海外要因分析

アベノミクス時代の海外要因はなんだったろう。
一つは原油価格の下落に代表される輸入価格の低下。
輸入デフレが日本の名目金利の押し下げ要因となったと解される。
もう一つは米期間プレミアムの低位安定。
日米の金利が金融・為替市場を通してある程度連動しているためだろう。

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