浜町SCIコラム
みずほ証券誤発注裁判の「過失相殺」
みずほ証券がジェイコム株について誤発注を行い、大きな損失を出した問題で、12月4日、東京地裁が判決を下した。
東京証券取引所に約107億円の支払いを命じた。
この事件は、みずほ証券が誤発注したことに気づき、発注の取り消しをしようとしたところ、東証の取引システムが取り消しを行わなかったもの。
みずほ証券は、発注の取り消しができなかったために生じた損害と弁護士費用、合計415億円の賠償を請求した。
東京地裁は、双方に過失があったとし、その過失割合を東証7、みずほ証券3とした。
この過失相殺について、世間で議論を呼んでいる。
こういう例えはどうか。
ある人が車を買った。
ドライブに出かけたところ、アクセルを危険なほどに踏み込んでしまった。
すぐに気づいてブレーキを踏むが、ブレーキが効かない。
目の前には急なカーブがどんどん迫る。
カーブを曲がりきれず、大事故を起こしてしまう。
この例えのポイントは、もしもブレーキが決められたスペックどおりに効いていたら、事故は起こらなかったとすることだ。
このような場合、間違いなく、車の提供者が責任を問われるだろう。
そこに、「アクセルを踏みすぎたから」などという過失相殺は考えにくい。
一歩下がって見てみると、こういう部分の責任分担というのは、いわば「安全の値段」といえそうだ。
バグのないシステムを求めれば求めるほど、コストはかさんでいく。
みずほ証券の誤発注が起こるまで、それにかかわる安全の値段は誰も払っていなかった。
損害が出て、訴訟になってはじめて、安全の値段の負担が議論された。
では、今は完全に改善されただろうか。
実は、無数の潜在的な事故の安全の値段は意識されないままなのではないか。
意識されないがゆえに、市場参加者があまねく安価なコストを享受できているのかも知れない。
私たちは、もっと多くの手数料を東証に支払うべきなのかもしれないのだ。
市場システムに潜むリスクについて、考えさせられる事例だった。
この記事は 2009 年 12 月 5 日 土曜日 3:06 PM に その他 カテゴリーに公開されました。 この記事へのコメントは RSS 2.0 フィードで購読することができます。 現在コメント、トラックバックともに受け付けておりません。