企業の海外進出における参入手段の比較

輸出

ほとんどのメーカーは海外進出の第一歩として輸出を行い、その後、手段を変更する。

メリット 進出先で製造拠点を設立するコストを節約できる。
生産の集中による経験曲線と規模の経済の恩恵が得られる。
デメリット 輸出元が製造コストの低いなどの優位性のある国とは限らない。
高い輸送コスト。関税や非関税障壁。
代理店を使って現地販売を行う場合、マーケティング管理が行き届きにくい。

ターンキープロジェクト

プラント建設でのターンキープロジェクトは、実質的に、プロセス技術を海外に輸出することに他ならない。
つまり、輸出の極端な例と言えなくもない。

メリット 保有するプロセス技術から大きな利益を得る手段となる。
FDIが現地政府によって制限されている場合などに有効。
FDIのリスクが、長期的に政治・経済上の理由から高いような市場で重要となる。
デメリット 仕向け地で長期的な活動を行うことにはならない。これについては、ターンキープロジェクトの設備のオペレーションにマイノリティ出資するなどの対応が考えられる。
顧客が将来、競合相手になるリスクがある。
技術流出のリスクがある。

ライセンス契約

メリット 進出のリスク・コストを負わないで済む。海外進出の資金がない場合、現地のリスクを取りたくない場合、FDIが規制上できない場合などに有効。
価値のある無形資産を保有しているが、自社では事業化したくない場合にも用いられる。
デメリット 海外事業に対するコントロールが緩くなり、経験曲線や規模の経済も生かしにくい。
多国籍企業の場合、国ごとの利害の調整が難しくなる。ある国のライセンシーが他の国でのライセンシーと競合する場合、ライセンサーに都合のいいように国ごとの取り扱いを変えようとするとトラブルになってしまう。
技術ノウハウの流出が起こるほか、技術ノウハウの管理が難しい。このリスクを軽減するには、クロスライセンス契約を結んで牽制を可能とする、JVなどの資本提携を組み合わせることで利害の衝突を緩和するなどがある。

フランチャイズ

フランチャイズはライセンスと似ているが、現地に長期的にコミットする時に用いられることが多い。
フランチャイズはライセンスの1種と考えられるが、無形資産を売るだけでなく、フランチャイズ契約に定めた厳しいルールの遵守、継続的な営業をフランチャイジーに求める。

メリット 進出のリスク・コストを負わないで済む。それらを負うフランチャイジーには、早期の経営安定化へのインセンティブが働く。
小さなコストで、早期にグローバルなプレゼンスを確立するのによい。
デメリット サービス業で多く用いられるため、経験曲線や規模の経済の問題は少ない。
国ごとの利害の調整は難しい。
ブランド価値の源泉となる品質を、遠隔地の事業に対して、グローバルに統一したレベルに維持するのが難しい。これを軽減するには、進出国ごとに事業が成長する間、子会社(含むJV)を設け、フランチャイジーを管理・監督させる。

合弁会社, Joint Venture

メリット 現地パートナーの知識・経験を活用できる。現地パートナーには、マーケティングや他社との競合ノウハウを求めることが多い。
進出のリスクやコストを折半できる。
規制上の制約でJV以外がありえないことも多い。現地パートナーに、国有化や政府による干渉を避けるよう働かせることができる。
デメリット ライセンスと同じように、技術流出の恐れがある。この恐れは、合弁契約によってある程度緩和できる。JVでマジョリティを取るのも有効だが、パートナーが見つかりにくいという欠点がある。
完全子会社ほどにはJVはコントロールできない。場合によっては、赤字覚悟で運営しなければいけないが、JVだと難しい。
JV株主間の意向は時間とともに変化し、株主間での意見の相違が生じ、論争になる。

完全子会社

完全子会社は、自前で設立するか、企業買収をするかにより保有できる。

メリット 競争力の源泉が技術力である場合は、技術流出の危険がなく好まれる。
世界全体での戦略に合わせられるよう、子会社の戦略を自由にコントロールできる。
経験曲線や規模の経済の恩恵を受けられる。各国の工場間で、部品・製品の製造の調整が行える。
デメリット コストとリスクをすべて負担することになる。これは現地企業の買収を行えば、軽減することができるが、買収には買収のリスクが生じる。

進出形態に影響を与える要因

コアコンピタンスが技術力の場合、ライセンスやJVは嫌われ、完全子会社が好まれる。
例外はある:
 ・戦略的提携(後述)
 ・迅速な海外展開: 模倣品が現れる前に、市場を押さえる。
 ・競合相手への技術供与: 相手の自社開発を遅らせ、デファクトスタンダードを獲得できることがある。
コアコンピタンスが経営力の場合、ブランド価値を維持することが重要であり、これは法規制で守られることが多い。
サービス業では、現地に統括会社をおいてフランチャイズ展開を行うことが多く、現地法人はJVが好まれる。
コスト削減の必要性が高いほど、輸出と完全子会社の組み合わせが選択されるようになる。
これにより、経験曲線と規模の経済の恩恵を受けることができる。
マーケティング機能の場合は、国や地域ごとに完全子会社を持つのが通例。
JVより完全子会社が好まれるのは、世界にまたがるバリューチェーンを強くコントロールしたいという意図からだ。
また、ある国での利益を他の国の拡大のために使えるなどのメリットもある。


戦略的提携

狭義の「戦略的提携」という言葉は、潜在的・現実的な競合相手との協業を指す。
資本提携から、JV設立、短期の共同作業まで含む概念。

メリット 海外市場への進出を可能にする。新製品・新技術の開発コストを分担できる。補完的な機能を提供し合い、得がたい能力・資産を得ることができる。デファクトスタンダード確立に役立つ。
デメリット 自社が得たメリットを相手に与えることになる。

戦略的提携の失敗率は高いと言われている。
ある研究では、2/3の戦略的提携は2年のうちに深刻な経営上・財務上の問題に陥るという。
それを解決できたとしても、1/3の戦略的提携は、その当事者により失敗と評価される。
失敗とならないためには、パートナーの選定、提携の仕組み、管理方法に注意する必要がある。

(1) パートナーの選定

目標への意欲
戦略目標には様々ある: 市場へのアクセス、新たな開発のリスクとコストの分担、相手のコアコンピテンスへのアクセスなどだ。
パートナーは自社が持たない能力を有し、目標を実現する意欲を持たなければならない。

ビジョンの共有
パートナーは提携の目標に向かって、ビジョンを共有できなければならない。
パートナー間でのビジョンが大きく異なる場合、失敗する確率は高くなる。
お互いの戦略上の役割を誤解しないようにすべきだ。

フェアプレー
パートナーは、提携を利用して不当に相手からノウハウ等を収奪しようとはしない。
フェアプレーをしないパートナーでは、提携は長続きしない。

この3つの条件に合うパートナー候補を選定するため、徹底的な調査を行う必要がある:
 ・関連の公開情報の収集。
 ・第三者(候補の他の提携先、投資銀行、元従業員を含む)からの情報収集。
 ・提携をコミットする前に、よく知り合うこと。
  Chemistryを確認するため、ミドルクラス同士の会合を持つことを含む。

(2) 提携の仕組み

自社からパートナーへ、あまりにも多くを与えないよう、リスク軽減を図る必要がある。

・移転する経営リソースは、提携の目的のみのために使われることを確保するため、「wall off」を徹底する。
 (wall offとは、開示する情報(技術、ノウハウ、ロケーションなど)を、提携に必要な範囲のみに厳格に限定すること。)

・提携契約の中で、パートナーが便宜主義に走ることを防止する条項を盛り込むこと。

・提携契約の中で、お互いに定義した経営リソースを提携のために拠出し、提携の目標実現のために努力することを定めること。

・パートナーのコミットを強めるような工夫(出資やJVなど)を設けること。

(3) 管理方法

文化的な違いが提携実行の最大の障害となる。

信頼関係の構築
会社の経営者間で人間関係を作り上げる。
これは、業務上の付き合いだけに止まらない。

パートナーから学ぶ
提携からどれだけ得るものがあるかは、どれだけパートナーから学び取れるかにある。
学び取るためには、パートナーから学んだ知識を自社内で試してみることだ。
全社員にパートナーの強み・弱みを説明し、学ぶことがどれほど大切かを分からせ、得られた知識を自社組織に周知させる。