日本電産と東洋電機製造の神経戦(5)対決姿勢が鮮明に

日本電産が「第3回」と呼ぶ質問事項への回答書が、11月25日に東洋電機製造に対して提出された。
このあたりから、両社のリリースには隠すことのない対決姿勢が色濃く現れるようになった。

2008/11/25 日本電産よりのリリース

第3回質問事項に対する回答書を東洋電機製造へ提出したと公表した。
あわせて、買収防衛策に定めれた手順にのっとり、日本電産に対して速やかに情報提供完了の通知を行い、取締役会評価期間を開始するよう要請している。

日本電産は、これまで、東洋電機製造が質問書の内容を開示していないことを配慮し、独自の判断による回答書内容の開示をせず、東洋電機製造の取締役会に対しては、同意さえあれば、開示の用意がある旨を伝えてきたという。
日本電産としては、東洋電機製造の買収防衛策を尊重し、誠実に回答してきたとの認識を強調しているようだ。
一方で、東洋電機製造による11月17日付プレスリリースでは、「追加質問のほぼ過半について具体的な回答を留保されました」等との見解が記載されており、認識の相違が鮮明化した。
日本電産のリリースでは、

東洋電機製造から今回第3回質問事項として受領致しましたご質問が、全て第2回質問事項に含まれる質問と同一内容をそのまま繰り返すものであったことから、これに対する対応には苦慮せざるを得ませんでした。

と書かれており、日本電産が、東洋電機製造の取締役会に対して、あからさまな非難を始めた印象がある。
同じ質問が繰り返されたことに対する考え方は、両社とも全く相容れないようだ。

非難をしながらも、日本電産は、「一歩踏み込んだ回答」を用意したと強調する。
このあたりから、神経戦はエスカレートしていく。

東洋電機製造取締役会より要請のあった「インタビューによる回答」、「秘密保持契約締結の上での回答」については、東洋電機製造の買収防衛策に定める「取締役会評価期間」開始前には応じないとした。
日本電産は、その理由を次のように説明する:
インタビュー: 日本電産は従前より、東洋電機製造に、双方向の「直接対話」を要請してきた。
一方、東洋電機製造が要請するインタビューでは、特定のインタビュアーに対して、日本電産から一方向に情報提供を行うに過ぎないため、
 ・双方向の「直接対話」でない。
 ・東洋電機製造の株主、従業員、取引先も含むステークホルダーとのコミュニケーションにならない。
として、拒絶している。
秘密保持契約締結: 日本電産は、東洋電機製造の買収防衛策を尊重し、東洋電機製造の株主を含むステークホルダーが検討を行うために必要な情報を提供することが重要と考えていると主張。
秘密保持契約という制約された下で東洋電機製造取締役会のみに情報を開示することは、東洋電機製造のすべての株主の利益の最大化という、この買収防衛策の原則に反するものとして、秘密保持契約の締結を拒否している。

日本電産は、以上のような論拠から、
 ・日本電産が誠実かつ最大限に回答を行ってきたこと
 ・東洋電機製造取締役会には、判断に十分な情報を提供したこと
 ・東洋電機製造取締役会が、早期に次のプロセスに前進すべきこと
 ・これまでの質問・回答が公開されることが望ましいこと
と結論付けている。

2008/11/25 東洋電機製造よりのリリース

「補足回答書」の受領を公表した。
東洋電機製造は、前回の質問が「追加」ではなく、前々回の質問に対する「補足」であると主張したいらしい。
補足回答書でも、再度、回答を留保されたもの、不十分な内容のものがあったとした。
また、要請したインタビューは事実上、拒絶されたという。
東洋電機製造は、インタビューにでの説明も含め、東洋電機製造取締役会として十分な回答が得られたと判断できなければ、情報提供完了通知を発出できないとしている。

日本電産の議論は、なんとも建前論のように見える。
永守社長らしくない対応だ。
本当に誠実に会話を交わしたいなら、秘密だろうが、一方通行だろうが、受けて立てばいいと考えるのが、実務家にとって自然なことだ。
投資銀行にでも、知恵をつけられたのか。
あるいは、同日までに、両社の信頼関係はすでに相当に損なわれていたのだろうか。
いずれにせよ、本M&Aが全面的に「友好的」に進む可能性は極めて低くなったのだろう。

一方、東洋電機製造の態度もほめられたものではない。
仰々しく買収防衛策を設けておきながら、都合よく例外運用をしようとしたがために、日本電産に揚げ足を取られることになった。
取締役会が判断をするのに、どこまでの情報が必要なのか、それが問われている。
あまり、抽象的に過ぎる提案は問題外だが、経営の意思決定とは、本来、勇断を要するものだ。
東洋電機製造取締役会がまだ判断できないとするのは、結論がNoに決まっていることによるものなのだろうとさえ思わせる節がある。

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