Bitcoin:ボラティリティが高い本当の理由

ビットコインの主要市場Mt. Goxの引き出し停止が続いている。
Mt. Goxは停止の原因をビットコイン共通の問題と主張しているが、Bitcoin FoundationはMt. Gox固有の問題と他人事を決め込んでいる。

イベントごとに急落する仮想通貨

Mt. Goxによれば、引き出しを停止したのはビットコインでの引き出しのみだという
円などの通貨での引き出しは通常通り行っているという。
もっとも、Mt. Goxからの通貨での引き出しには日数がかかるとの不満は以前からあった。
今回のトラブルで「取り付け騒ぎ」になっていると推測されるから、通貨での引き出しにも一層の時間がかかるだろう。
真実はどうかわからないが、外見的にはねずみ講や出資詐欺の末期と似たような現象である。
投資家がうろたえるのも無理はない。

急落する原因は多岐にわたる

7日には一時2割も急落したビットコインだが、このボラティリティの高さは何に由来するのだろう。
あいまいに言えば「信認」のなさということになろうが、もう少し分析してみたい。

今回のMt. Goxのトラブルで証明されたのは、技術面での脆弱性。
法律・規制上の不透明感から売られることもあった。
また、流動性・利便性が他の金融商品より劣るという面もあろう。
(今回の引き出し停止も、流動性が制限された一例だろう。)
政府・中央銀行の監督がないため、利用者保護がないのも大きな要因だ。
新しい技術だから、課題が多いことを悲観するのもどうかと思うが、課題山積であるのは事実だろう。

ビットコインがこうした問題を跳ね返し、流通の幅を広げていくことは可能だろうか。
筆者はかなり悲観的に見ている。
現状のビットコインの設計には、成長の限界がビルトインされているように思えるからだ。
そもそもビットコインの最大の利点には、節操なく通貨を供給する各国中央銀行や政府から解放されている点もある。
しかし、これがもろ刃の剣になっている。

ビットコイン発行量には上限がある

ビットコインの新規発行を受けるには「マイニング」と呼ばれる計算を行う必要がある。
これは第3者間のビットコインの決済を承認する作業であり、ビットコイン取引の真正性を担保する重要な作業である。
この作業を引き受けることの報酬として、新規発行されたビットコインを受け取るルールになっている。

ビットコインには発行量の上限がある。
少なくとも現状の仕様では上限が決まっている。
(ただし、端数を設けることはできる。)
この上限に擦り合うように、マイニングの報酬が決まっている。
上限に近付くにつれ、報酬はゼロに近づいていく。
最後にはビットコインは発行されなくなり、承認作業の対価は取引手数料だけになる。

ビットコインの世界は極端な引き締め状態

問題はこの上限である。
ビットコインがより広く使われるようになる条件の一つは、対象とする経済活動の拡大に合わせて、ビットコインの流通量が拡大していくことだろう。
ところが、上記のとおり発行量には上限がある。
さらに、ビットコインを貸借する金融機関もほとんどなく、信用創造も進まない。
結果、ビットコインのマネーサプライはなかなか伸びない。
マネーサプライが十分でなければ、カバーできる経済活動にも上限ができてしまう。

ビットマネーのマネーサプライが十分でないとはどういうことだろう。
それは、ビットマネーがカバーする経済では極端な金融引き締め状態にあるということだ。
2013年のビットマネーの急騰はもちろん投機的な原因によるものであったが、同時にビットコインが引き締め的であるという本来の性質にも由来している。
引き締め的な通貨は上昇するのである。

ビットコインが上昇を続ければ流通量は増えにくい矛盾

ビットコインの急騰は、信用創造を著しく阻害する。
仮にビットコインを貸してくれる人がいたとしても、誰も借りる人はいないからだ。
1年もたたないうちに10倍に増価する通貨で誰が借金をするだろうか。
仮にビットコインで同時期に借金して投資をすれば、その期間に価値を10倍にしなければいけないが、そんな投資先はない。
だから、ビットコインは貸借の対象になりにくい。

言い換えれば、ビットコインが上昇をしている間、ビットコインの経済はデフレ状態にあるのである。
ビットコインが10倍に増加する期間、ビットコイン建てで見た世界は1/10に縮小したのである。
超デフレだから信用創造は進まない。

成長に限界がある宿命

上記の問題を回避するための一法は、ビットコインが減価することだろう。
ビットコインが減価するならビットコインで借金をする人が増え、マネーサプライの増加要因となる。
しかし、減価する通貨を保有したい人はいない。
このように、ビットコインはその設計段階において、大きな経済をカバーしえない宿命を背負っているように見える。
仮にそうならば、この仕組みは期待が大きかった分、いつか大きな調整を迎えるのだろう。

金の価値にはいくつかフロアがある

ビットコインのファンはよくビットコインを金に喩える。
金は採掘可能な量に上限があるからだ。
しかし、この比喩は適切だろうか。

2013年、金はそれまでの長期上昇トレンドから一転、大きな調整を迎えた。
現在も産金コストと同程度の水準まで低迷している。
金価格にはいくつかフロアがあると思う。
一つは産金コストである。
その次に、産金コストのうちの変動費部分であろう。
固定費の回収ができなくても、産金会社は操業を続けるだろうからである。
さらに、工業用途・宝飾用途から見た価値があるのだろう。

産金コストは将来の産金の可否には大きなファクターだ。
しかし、すでに産出された金について言えば、生み出すために使われた過去の費用でしかない。
いわゆるSunk Costであり、完全なフロアを形成するものではない。
喩えて言えば、どんなにお金をかけて作った品物でも、誰も必要としなければ無価値ということだ。

ビットコインには完全なフロアがない

ビットコインにも、金のようなフロアはあるだろうか。
まず、産金コストに対応する採掘コストという節目はある。
ビットコインの主な採掘コストは、計算機投資による固定費と電気代などの変動費である。
次に、変動費という節目もあるだろう。

一方、ビットコインには工業用途や宝飾用途は存在しない。
ビットコインは通貨でなければ何の役にも立たないものなのだ。
この違いがビットコインの価値に与える影響は小さくないだろう。
このフロアのなさは、あたかも破綻しうる国家の通貨のようなものだ。

洗練されたユーザーは逃げ足も速い

ビットコイン利用者は、ねずみ講や出資詐欺とは異なり、洗練された人たちの割合も多いのだろう。
それだけに、メリットと同じくリスクもよく知っている。
そういう人は逃げ足も速い。

ビットコインは国家権力から解き放たれている。
国家が発行する通貨には、国家が破綻しない限り、最終的には徴税権という国家権力の引き当てがある。
魔法が解けた時、ビットコインは無価値になりかねない。