追加緩和は織り込まれたか

Reuters日本版のニュースを読んでいて首をひねった。
日銀が融資制度の規模倍増、リスク顕在化なら「躊躇なく追加緩和」という記事だ。

黒田東彦総裁は会見で、下振れリスクが顕在化すれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和に踏み切る姿勢を強調し、市場の追加緩和期待をつないだ

とある。
本当に黒田総裁はここまで言ったのか。
日経QUICKの方を読んでみたところ

「経済、物価情勢を点検して上下双方向のリスクが明らかになればそれぞれに対応した政策の調整を行うことに全く変わりはない。
リスクが顕在化することがあれば、躊躇(ちゅうちょ)なく現在の量的・質的金融緩和の調整を行う

とある。
直接話法で書かれていることから、こちらの方が真実に近いのだろう。
黒田総裁が言ったのは、上下対称の話だ。
つまり、インフレ率や景気が

 下振れすれば追加緩和
 上振れすれば緩和縮小

という話だ。
これならとても論理的だと腑に落ちる。

Reutersの記事が気にかかった。
上記記事が海外に配信されれば、誤解を招くのではないか。
そこで、Reuters英語版を調べてみた。
日本版を書いたのは日本人記者だが、英語版は外国人記者が書いていた。
まず、速報記事

黒田東彦日銀総裁は火曜日、日本経済が中央銀行の予想どおりに推移していると述べ、差し迫った緩和拡大は必要ないと示唆した。
・・・
「もしもリスクが顕在化した場合、躊躇なく政策を調整するが、現在は我々の予想どおりに推移している」

と書いている。
外国人記者は日経QUICKと同じ捉え方をしたようだ。

さらに英語版では別の記事も書かれていて、そのタイトルが

弱いGDP統計にもかかわらず日銀は追加緩和を保留、貸出プログラムを拡充

明らかに追加緩和が発表されなかったことに失望する論調だ。
これが海外勢の捉え方なのかもしれない。
うがった見方をすれば、海外勢は安倍政権の成長戦略などとうに見切っていたのかもしれない。
そんなことを待つのではなく、追加緩和による円安・株高により短期で稼ぎたいだけなのではないか。
安倍首相が言う「海外から投資を呼び込みたい」という希望は、こんな結末で終わるのだろうか。

さて、私たちが考えるべきは、追加緩和が織り込み済みか否かである。
Reuters日本版の論調が優勢であるなら、追加緩和は織り込まれている。
英語版が優勢なら、失望によって織り込みが剥落しつつある。
この2つの可能性を整理しておきたい。

織り込み済みの場合

経済が日銀の思うほどに改善せず、追加緩和が行われるケース。
追加緩和が行われれば少しはインパクトがあるだろうが、織り込み済みなのでインパクトは大きくない。
むしろ、副作用が強く意識されかねない。

逆に経済が好調で追加緩和が行われない場合、経済の好調さと追加緩和の見送りが相殺し合うことになる。

織り込みが剥落している場合

経済が日銀の思うほどに改善しないで追加緩和が行われるケース。
経済の不調というマイナスと追加緩和というプラスが相殺し合う。

経済が好調で追加緩和が行われない場合、経済が好調な分、市場にはプラス。

結局のところ、市場の好転は経済が良くなるしかないのではないか。
追加緩和というのは、それが意識された段階で意味がなくなるように思われてならない。

では、追加緩和は織り込まれたのか。
ひとつのカギは、現在進行形のCMEの日経平均先物だろう。
昨日14,843.24円と大幅高で引けた日経平均をCMEの先物が追随するか。
執筆時点でCME先物は14,740円。
S&P 500がプラス、ダウがマイナスと米国株はマチマチ。
少々日経平均先物の力不足か。