頭のないカマキリ

PIMCOのマネージング・ディレクターWilliam H. Gross氏の文章は面白い。
そのテーマはいつも投資のはずだが、考えもしないようなアングルから話が進む。

先月の「Investment Outlook」では、カマキリの悲しい性から文を書き進めている。
オスのカマキリは交尾のためにメスに近づき、食べられてしまうという話だ。
Gross氏によれば、
 ・補助金や減税の恩恵を受ける米国民はメスのカマキリ
 ・メスのカマキリが、将来の世代の頭を食べている
という。
米国における財政悪化、インフレ懸念を問題視するエコノミストの一人であるわけだ。

なぜ氏がカマキリに例えるかと言えば、

財政赤字支出は将来の商品価格と消費財価格を押し上げる一方、賃金の上昇に繋がらないため、富裕な国と貧しい国との間で進む賃金のリバランスにより米国の賃金が圧迫され続けることは避けられません。
米国民は痛みを感じるものの、オスのカマキリと同様、なぜ頭部がなくなってしまったのか、理解できない

という理由であるようだ。
かつて日本に公共事業の拡大を求めた米国も、自国についてはこういう論調であるところに少し腹が立つ。

氏はこの財政赤字の帰結を
 ・実質ベースの賃金の伸び悩み
 ・ドル安による資産の価値の下落
 ・低金利と長期債の価格下落リスク
 ・ソブリン・クレジット・リスク
と指摘している。
まさに現在の日本そのものだ。

さて、Investment Outlookは、PIMCOが顧客に投資アドバイスをする媒体である。
この話の投資における含みは次のように書かれている。
 ・長期債を避け、クレジットの質に注目
 ・具体的には、新興国の変動金利債、ドル以外のエクスポージャー
 ・株式なら、先進国ではなく、統制のとれた新興国: カナダ、ブラジル、メキシコ
 ・インフレ、ドル安、米国債の格下げに注意

奇しくも、日米では長期金利の上昇が続いている。
米国は経済の回復期待によるものと語られているが、日本はどうだろう。
個別銘柄や資産クラスより、ソブリンに投資が引きずられる世の中が近づいているようだ。