高頻度取引:世紀の大テレビ論争

この数日、面白い(=感情的な)ニュースが高頻度取引(HFT)に集中していた感がある。
なんでこんなにマイケル・ルイス氏の新著が注目されたのか。


それはHFTの本質的な議論によるものだけではなかったようだ。
どうやら、CNBCで放送された関係者間のディスカッションにあるようだ。
その様子はCNBCのサイト
http://video.cnbc.com/gallery/?video=3000263252
で見ることができる。
23分にもわたる討論で、内容を正確に拾うのはおっくうなのでやめておく。
(英語のTranscriptがサイトに付いているので読みたい人はどうぞ。)
ただ、討論の様子がとても異常なので、その雰囲気を味わうだけでも面白い。

主たる登場人物は3人:

  • マイケル・ルイス: 「フラッシュ・ボーイズ」の著者
  • HFTに内在する不公平、不誠実を著書の中で糾弾している

  • ブラッド・カツヤマ: 「フラッシュ・ボーイズ」の主人公的人物
    RBC在勤中にHFTの問題に気づき、HFTに負けない新市場IEXを準備中の人物
  • ウィリアム・オブライエン: 取引所BATS Global Marketsの社長

討論は、オブライエン氏がルイス氏・カツヤマ氏に「恥を知れ」と叫ぶところから始まる。
この業界側の人物の怒り方が尋常ではないのだ。
MCがカツヤマ氏やルイス氏に発言を求めても、話をさえぎってわめき出す始末。
23分間のビデオは一貫してこんな感じで進む。
結果、中身のある議論とはならない。
こんな進み方だから、見る人の印象は旧来の業界の側に不利に働いたろう。

さて、この論争には落ちがついていて、後日CNBCが続報している。
討論の中で

カツヤマ氏がオブライエン氏に
「(BATSが運営する)Direct Edge市場の取引価格決定の仕組みは何を使っているか?」
と尋ねたのに対し、オブライエン氏は
「(スピードの速い)ダイレクト・フィードを使っている」
と答えた。
カツヤマ氏が
「Direct Edgeは遅い証券情報プロセッサー(SIP)を使っている」
と言ったのに対し、オブライエン氏は
「違う」
と言った。

というやり取りがあった。
速いダイレクト・フィードを使うか、遅いSIPを使うかは、HFTが付け入る隙があるかどうかの重要なポイントだ。
果たして、どちらが正しかったか。
BATSによる「市場データ利用についてのお知らせ」と題したリリースの内容は、注文のルーティングはダイレクト、価格のマッチングはSIPというものだった。
CNBCは

カツヤマ氏が正しかった

と書いている。
ここに問題の深刻さが表れている。

BATSは2005年に設立された新興の取引所で、傘下の取引所と合わせればニューヨーク証取・NASDAQについて第3位の取引所である。
自身もいわばベンチャー精神に支えられているにもかかわらず、ルイス氏はともかく、新興IEXの創業者カツヤマ氏にも牙をむいた。
心中だけならまだしも、公然と見苦しいまでの噛み付きようだった。

HFTの是非を語る討論に臨んで、取引所の運営者が自社の使用する取引エンジンを知らない。
これこそ、HFT問題の深刻さなのではなかろうか。
取引所に悪意があるのか否かはわからない。
しかし、どうやらHFTに何を許して、何を許していないのかもわかっていないようなのだ。