法人税引き下げ合戦は破綻へのチキンレース

Financial Times(日経にて訳文)の社説で法人税の課税のあり方について議論されていた。
記事では、米ファイザーが英アストラゼネカとの合併にあたって本拠地を税率の低い英国に置くという話から始まる。

FTはこう提言する:

米国の税制を改革するならば、どこで収入が発生したのかを問わず世界での収入に課税するか、地域ごとの制度に完全に移行するかのどちらかに変えるべきだ。
前者を採用する方がよい。

もう少し整理しておこう。
前者を全世界所得課税、後者を国外所得免除制度と呼ぶ。
日米は前者をとっているのだが、そこに抜け穴がある。
国外での所得への国内での課税は国内に配当される時点で行われるのだ。
多くの多国籍企業では税率の低い国での所得について、現地での課税を済ませた後、なるべく本国へ送金しないようにしている。
こういう節税スキームが問題化している様子をこれまでも何度か紹介した。
FTは、こういう抜け道なしの全世界所得課税にしようと言っているのだ。

政府や与党で法人税減税の議論が盛んだ。
日本の法人税率は表面だけを見れば諸外国より相当に高い。
(さまざまな減税や補助金とのネットでどうかはわからない。)
法人税が高いために産業や雇用に悪影響があるのも、マージナルにいえば事実だ。
だから、法人税減税は誤りではない。
ただ、そう動く中でも、あるべき道がどのようなものかを見失ってはいけない。

FTは米国に注文をつけている:

米国は国内における法人税の引き下げ合戦にももっと懸念を示さなくてはならない。
・・・
米国は、世界の国々があからさまな国による支援や補助金の額を世界貿易機関(WTO)に報告することを求めていた。全米50州の当局にも同じ要求をすべきだ。

「法人税の引き下げ合戦」は世界全体で言えば無益なものだとの指摘である。
極めて近視眼的に言えば、日本の法人税減税は防衛的なものとして許容しうるかもしれない。
しかし、それはあたかも他国が核を保有しているから日本も保有したいというようなものだ。
むしろ、あるべき道は国際的な協議によって各国の法人税率をある程度収斂させることではないか。
(そこでは、諸減税や補助金、国の発展度合いなどが勘案されるべきだろう。)
FTは

世界の企業は各国の税制をてんびんにかけるようになった。
これはアイルランドやルクセンブルクのような小国の納税者に恩恵を与えるかもしれないが、ほかの圧倒的多数には損失をもたらす。
現状は二重課税防止でなく、「二重非課税」というような状況になりつつある。

辛口だが正論だ。
世界的に政府の債務が膨れる中、各国が減税を競い合うことのおろかさに気づかないといけない。
FTが皮肉ったように、米国は支援や補助金をWTOの場で吊るし上げようとしている。
ならば、徴税権についても国家間で著しい不都合のないように調整されてもいいはずだ。
そういう努力なしに法人税減税だけが起これば、うがった見方をする人が増えるのではないか。