【輪郭】日本の量的緩和に出口はあるか

量的緩和政策の是非を論じるつもりはない。
ここでは、いつかはやめなければいけない政策の出口について考えたい。

出口戦略がもっとも大切

量的政策の是非についてはすでに多くのエコノミストが論じている。
すべてが悪いわけでもなく、すべていいわけでもない。
しかし、擁護派も反対派も一致しているのは、この政策はいつかやめなければいけないという点だ。

リフレ派の理論的支柱、 内閣官房参与、浜田宏一イェール大学名誉教授はこの政策を「実現可能なネズミ講システムだ」と表現した(Reuters記事)。
浜田教授は無限に継続しうると見ているとも取れるが、「ネズミ講」というワーディングには忌避すべきものとの意識もこもっていよう。
政府も日銀も出口戦略を論じるのは早計という。
そう述べることは正しい。
しかし、そう述べる裏では、着々と出口戦略を練っておくべきだ。

FRBがQE3を終了できた背景

量的緩和が麻薬のようなものだとの指摘は大きい。
ジム・ロジャーズマーク・ファーバーピーター・シフらは、FRBがQE4を始めると予想してきた。
その説には相応の説得力があったのだが、FRBは思いのほかあっさりとQE3を終了してしまった。
今回は昨年のバーナンキ・ショックのような混乱さえなかった。
この背景には何があったろう。

要因はいろいろあろうが、マネー・フローの面で日銀の果たした役割は大きい。
QE1やQE2の終了の時は、FRBのQE終了は事実上の金融引き締めを意味していた。
ところが、今回、FRBがバランス・シートの拡大を取りやめても、海の向こうの日銀が潤沢な資金供給をしてくれていたのである。
いわば、日銀が資金供給を肩代わりしてくれているのである。

米国の量的緩和を肩代わりする日銀

近日の急ピッチな円安進行は、まさにそれを裏付けるものであろう。
日米の金利差がどうこうと言われるが、一番重要な2年もの金利にさしたる差はない。
今の円安は金利差でとらえるより、日銀がドル円の境を超えて米市場に資金供給していると見る方が自然だ。
(もちろん、比喩的な意味である。)

米国にはタカ派も多く、日本以上に量的緩和は危険視されている。
日銀がバランス・シートを拡大しているのをこれ幸いに、FRBはQE3を終了した。
FRBがリスクを取らなくても、日銀が肩代わりしてくれるのだから、言うことはない。

貪欲なFRBは次に何を考えるだろう。
言うまでもなく、利上げかバランス・シートの縮小であろう。
そうすることで、FRBは再び両方向の政策手段を取り戻すことができる。
どちらを先行するかは微妙だ。
市場予想は利上げとされているが、利上げは財政を圧迫する。
ゼロ金利を維持したままバランス・シートを縮小できるなら、それを狙う可能性もなくはない。
日銀が資金供給を肩代わりしてくれるなら、不可能も可能になるかもしれない。

日銀のバランス・シートは拡大を続ける

新債券王ジェフリー・ガンドラックは金利上昇を懸念するのは5年早いと語った。
2017年頃、FRBのバランス・シートは縮小を始める可能性があると述べた。
ここでFRBが再投資政策を取らなければ、FRBのバランス・シートは縮小に向かい、正常化が進む。
米国はきっとここでも日銀の肩代わりを望むのではないか。

日銀が2015年に2%のインフレ目標を実現する可能性は高くない。
あと1-2年は少なくともかかるだろう。
しかし、その1-2年で見事目標を達成したとしても、2017年頃と言えばFRBがバランス・シートを縮小したいと考えうる頃。
米国はここで日銀に肩代わりをやめてもらっては困る。
もしも日銀が出口を模索すれば、世界経済がマネーの供給者を失い、引き締めに苦しむことになる。

日銀がはまったババ抜きの罠

jokerとても単純な話だ。
量的緩和はババ抜きなのだ。
今ババはFRBから日銀に渡った。
日銀はこれを同程度の体力の中央銀行に押し付けなければならない。
体力があって資本市場が自由化されている中央銀行なんて、あとはECBとBOEぐらいしかない。
彼らがむざむざババを引くわけがない。
もう一つの可能性はリーマン危機以前なみの民間セクターでの信用膨張だが、これは本末転倒だ。

非常に単純な予想をするなら、日本の量的緩和政策に出口はない。
それどころか、日銀のバランス・シート拡大が長く続く可能性がある。
これを防ぐには、世界経済が痛みをともなう金融収縮に耐える覚悟を持つことだ。
さもなくば、当たり前のことが起こる。
ネズミ講が破たんすることをもって不幸な出口となるシナリオである。


山田泰史山田 泰史
横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属
東京大学理学部化学科卒、同大学院理学系研究科化学専攻修了 理学修士
ミシガン大学ビジネス・スクール修士課程修了 MBA
公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員
 
本コラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。本コラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。本コラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。本コラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。本コラムはコラムニストの見解・分析であって、浜町SCIの見解・分析ではありません。