モハメド・エラリアン:流動性の幻想が醒める時・・・

元PIMCOのCEOで独Allianz首席アドバイザーMohamed El-Erian氏がCNBCで市場のパラダイム・シフトの懸念を語っている。
あくまでリスク・シナリオとしながら、パラダイム・シフトによる株価急落の可能性に言及した。

(抄・意訳)

最大のリスクは(世界にあふれているように見える)流動性が幻想であることだ。
最大の懸念はパラダイムが変化してしまい、投資家がポジションを調整するのに必要な流動性がなくなってしまうことだ。
米経済が低ボラティリティ、回復中と思われなくなれば、地政学的なショックが大きくなってしまう。
すべてが変わってしまえば、少なくとも1割の調整に見舞われる。

ギリシャがEUを脱退すれば、短期的にカオス状態になる。
しかし、それは世界経済を倒壊させるほどのものではない。
短期的には損失がかさみ、ボラティリティが急増する。
それでも大災害に至らないのは、EUがギリシャ脱退に向けて準備を重ねてきたからだ。

ギリシャはギリシャが脱退すればEUが大きな打撃を受けると考えており、ドイツは切り離し可能と考えている。
真実はその間のどこかにある。

かつて「New Normal」という変化を提唱したエラリアン氏が新たなパラダイム・シフトの可能性に言及した。
エラリアン氏は”illusion of liquidity.”(流動性の幻想)と呼んでいる。

量的緩和政策の矛盾

思えば先進各国で実行された量的緩和とは矛盾に満ちたものだった。
各国は量的緩和を行ったものの、景気回復に重要な役割を持つ信用創造は十分に増えてこなかった。
まさに笛吹けど踊らずだったのだ。
では、ここで踊ってしまったらどうなったのか。

踊ってしまったら急激なインフレという大災害に見舞われかねなかった。
経済に元気がなかったがゆえに、皮肉にも各国は大災害に見舞われることがなかった。
つまり、笛を吹いても踊らなかったから、笛を吹き続けることができたのだ。
仮に経済が回復してしまえば、今まさに米国が難しい選択を迫られているように、金融政策を転換せざるを得なかったはずだ。

成果を出す前にやめるべき政策

日銀の異次元緩和を考えても容易にわかる。
異次元緩和でやっていることは、ベースマネーの拡大である。
現金通貨の量はそう変わるものではないから、実質的には日銀当座預金の増加を目指したものと言える。
これは、市中銀行が日銀に持つ預金残高であり、信用創造のタネとなるものだ。
日銀はタネを増やすことで、そのタネが育ってマネー・サプライを増加させる、すなわちインフレを引き起こす期待を醸成したわけだ。
ベースマネーの拡大はあくまでタネを増やすことであり、信用創造で生まれるマネー・サプライを増やすことではない。

日本の景気が回復し信用創造が活発化するようなことになれば、相当に早い段階で日銀は金融引き締め方向に転換せざるをえなくなる。
さもなくば、インフレ、あるいは資産インフレが発生してしまうからだ。
ベースマネー、つまりタネがたくさんあるがゆえに、インフレのペースは相当に急激になりかねない。
つまり、量的緩和とは結果を出す前に取りやめなければいけない政策なのである。

ところが、実際にはそうはならない。
金融緩和で喜ぶ人は構成比こそ大きくはないが、影響力が大きいことが多い。
他人のこと、後のことなどお構いなしに、政策決定者は金融緩和継続のプレッシャーを受けることになる。
日米欧は今まさにそういった岐路に立っている。