佐々木融氏:1980年代前半のドル高に似ている

最近、世界の投資家やエコノミストが現在をバブルの前後になぞらえるのが流行っている。
JP Morganの佐々木融氏はReutersコラムでバブル期へと向かう1980年代前半と比較している。

1982年のピークに至った主因は、当時のボルカーFRB議長による強烈な金融引き締め政策の影響などを受けたドルの急上昇であったが、一方で日銀による金融緩和と日本の財政赤字に対する海外からの懸念、日本人投資家による対外証券投資の増加を受けた円安という要因も貢献していた。
細かく見れば異なる点もあるが、大まかな意味では現在と似た構図だったと言える。

当時のピーク1ドル277円(1982年10月)と同じ水準は128円だという。
そのピーク後は

円安の流れが止まり、やや反転し始めたため、レンジ相場が続いた。
・・・
1985年9月22日のプラザ合意をきっかけにドルは急落。ドル円相場は240円から約1年間で152円まで急落した。

と紹介されている。
歴史好きなら、今回もドルの切り下げがあるのか、ついに基軸通貨の交代か、そんなことを勘ぐりたくなるところだ。
しかし、さすがに基軸通貨の交代というのはあるまい。
ユーロも円もその母国が病みに病んでいる。
人民元は有望だが、基軸通貨を務める準備はまだ済んでいない。

では、ドルの切り下げはありうるのか。
1982年のドル高はボルカーFRB議長(当時)がインフレ抑制のために行った金融引き締めの副作用だ。
FRBが金融緩和に転じると、ドル相場もピークアウトした。
現在のドル高はFRBがQEを終えて利上げに動こうとしていることの副作用だ。
次にドルがレンジを切り下げる時も、このような金融政策の逆転によるものという予想が働く。
佐々木氏は

果たして、現在のドル円相場が急騰途上の1982年半ばにあるのか、それとも1984―85年前半までのレンジ相場期の入り口にあるのか、現時点で明確な答えを出すのは難しい。
しかし、個人的な意見ではあるが、日銀が超ハト派の旗を降ろすより、FRBが超タカ派の旗を降ろすほうが早いように感じる。

と書いている。
注意深く読みほどこう。
第1文が言いたいのは、現時点の居場所が
 ・ドル高のピークまであと半年ぐらい
 ・ドル安が始まりレンジ相場に向かう
のいずれかであろうということ。
第2文が言いたいのは、
 ・日銀は当面は量的緩和を続け
 ・FRBの利上げは頓挫する
という予想だろう。
シナリオに整理しておこう:

コンセンサス:
利上げ予想継続
年央以降にFRBが利上げを断行。
さらにドル高が進行するが、さまざまな市場で動揺が起こり、FRBは利下げに追い込まれる。
リスクシナリオ:
利上げ撤回
米経済への先行き不安から、近いうちにFRBが利上げを断念する。
米金利は低下し、ドル円が円高方向に調整、レンジ相場に移行する。

いずれもそう悪い話ではない。
なぜか。
この30年あまりの日本の財政悪化が織り込まれていないからだ。
今の円には、ドルとの相対的要因だけでなく、財政の逼迫という絶対的要因もくすぶっている。
そう考えると、円高を予想する場合でも、大幅な円高というシナリオにはならないのではないか。
もちろん、災害時のリパトリエーションのような一時的な動きは起こりうるのだが。