バーナンキ:長期停滞論の難点

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低金利の謎を解こうという元FRB議長ベン・バーナンキ氏のブログの続き。
ローレンス・サマーズ元財務長官の趨勢的停滞論は国際的視点に欠くとして異を唱えている。

特集: バーナンキ 対 サマーズ
バーナンキ:金利が低い本当のワケ
バーナンキ:長期停滞論の難点
ローレンス・サマーズ:長期停滞論が誤りならばいいが・・・
バーナンキ:不均衡が低金利の原因
レイ・ダリオ:先進各国は長期停滞の中にある
(抄・意訳)

2015/3/31 低金利のワケ 2 – 趨勢的停滞

経済政策の最重要目標は次の3つ:

  • 完全雇用の実現
  • インフレ率の低位安定
  • 金融秩序の安定

ローレンス・サマーズの趨勢的停滞論は、これら3つの目標を同時に達成するのは極めて難しいとするものだ。

「趨勢的停滞」という言葉は1938年のAlvin Hansenによる造語。
大恐慌の後半、ハンセンは、人口増加と技術の進歩が減速したため、企業は新たな資本財への投資に取り組みにくくなったと論じた。
さえない投資は家計の消費抑制とあいまって、完全雇用の達成を数年にわたり阻んでしまうとした。

もちろん、ハンセンは間違っていた。
戦後の好景気(ベビー・ブームによる人口増、急激な技術の進歩など)を予想できなかったのだ。
しかし、サマーズによれば、ハンセンは間違ったのではなく、ただ早すぎたのだという。
いくつかの理由、たとえば

  • 現在の人口増加率の低下
  • 主力産業が資本集約的でなくなったこと(今のFacebook、昔の製鉄)
  • 資本財の相対価格の低下

などによって、ハンセンの予言(限定的な資本財投資と慢性的に完全雇用を実現できない経済)は現在の文脈にも重要だとした。
現在の資本のリターンが極めて低いなら、完全雇用を実現する実質金利(均衡実質金利)も極めて低い可能性が高く、マイナスともなりうる。
最近の低成長・低インフレ・低実質金利は趨勢的停滞論を支持し、すりあうものだ。

趨勢的停滞論は供給側ではなく需要側に注目した説である。
仮に経済の潜在供給力が増大しても、ハンセン-サマーズ説では投資・消費の支出が抑制されて経済は潜在供給力に達しない。
(例外は金融バブルが支出を押し上げるような場合である。)
しかし、サマーズは、趨勢的停滞が最終的には全体の供給力を減少させると論じている。
緩慢な資本形成、長期的な失業による労働力の能力低下が経済の生産能力増強を阻害するからだ。