今さら聞けない異次元緩和のタネ

Reutersのコラムニスト田巻一彦氏が「CPIと消費『同時拡大』のカギ握る賃金」というコラムを書いている。
この文章が、異次元緩和に不安を感じる人間の心理をよく映しているので、その心の動きを眺めてみたい。

異次元緩和では、予想インフレ率の上昇が消費を増やすという話だった。
コラムは

エコノミストの一部は、物価が上がり出すと個人消費にブレーキがかかり、物価の上昇が足踏みすると消費が持ち直すという関係があるとの推論を明らかにしている。

と伝え

もし、物価上昇が消費を抑制しているなら、「期待」を重視するアベノミクスの理想とは違った方向に動いていることになる。

と問題意識を提示している。
では、なぜそもそも個人消費を重視しているのか。
それは、名目GDPの内訳を見れば自明となる。

2014年度の名目GDP支出側

GDPの6割弱を占める家計の消費を全体の成長率向上の目玉に据えるのは至極自然なことなのだ。
だから

アベノミクスが主眼に置いているのは、デフレからの脱却による消費の盛り上がりだ。

という話になる。
ところが、日銀がインフレ基調をアピールする中、必ずしも消費の回復に力強さが見られない。
Reutersコラムでは「年金生活者の増加」を一因と指摘する。
賃上げの恩恵を受けない年金生活者がインフレの到来を予想し巣籠りを始めたという説明だ。

こうした節約志向は、アベノミクスが想定していた経済活動の姿と明らかな食い違いを見せることになる。

異次元緩和の波及経路-全体像では、アベノミクスの想定とは何だったか。
異次元緩和の原点に戻ってみよう。

日銀 岩田規久男副総裁の2013年8月の講演がバイブルとなる。
「『量的・質的金融緩和』のトランスミッション・メカニズム」と題するこの講演では、右図のように異次元緩和の効果の波及経路が明示されている。
図中の「消費増加」がどのようにもたらされるかを見れば、アベノミクスの当初の想定を理解できる。