今さら聞けない異次元緩和のタネ

消費増加をもたらす経路は2つある。
まずは、予想インフレ率上昇と密接な経路を見てみよう。

資産効果ルート

イメージが違う人もいるのではないか。
この経路について、金融抑圧のシナリオをイメージしている人は多い。
つまり、

  • 実質金利を引き下げマイナスにし
  • 現預金の購買力を奪うことで
  • 現預金を早期に使わせ、消費・投資を促す

という波及経路だ。
本音ベースではそのとおりだろうが、岩田副総裁の図ではそうなってはいない。
副総裁の図では、

  • 実質金利の引き下げで
  • 円安によるインバウンド消費増・外貨資産の円建てでの増価
  • 資産価格上昇を起こし
  • 資産効果で消費を増加させる

となっている。
つまり、資産効果が間に挟まっている。

では、資産効果は功を奏しただろうか。
答はYesだ。
しかし、十分とは言えない。
平均株価が倍になっても、実体経済、特に家計への満足感は今一つ。
やはり、資産効果ルートの恩恵は一部の家計に偏って恩恵をもたらし、全体への波及は期待ほどでなかったと言うべきだろう。

Reutersコラムでは

やはり、消費が盛り上がるかどうかは、賃上げなどによる所得の行方にかかっているのではないか。

と話が進む。
なぜかと言えば、もう一つの波及経路だからだ。

賃金上昇ルート

もう一つの波及経路は賃金である。
しかし、この経路は少々まだるっこしい。
風が吹けば桶屋が儲かるといった風情があり、経路の太さに疑問が残る。
需給ギャップの中身、生産の中身、雇用の中身によって、賃金総額の増勢は変わってくる。
何が売れて需給ギャップが埋まるのか。
何が国内で生産されるようになるのか。
正社員なのか、非正規社員なのか。
そんなことで、総額は大きく変化する。

Reutersコラムは賃金上昇と消費動向を案じている。
上記の2つのルートが働かないとなれば、最大のパイである家計消費のテコ入れが理論上不可能となるからだ。
そうなれば、この政策自体を継続する意味は著しく減殺される。
この政策の最終目的はインフレ率を2%にすることではない。
インフレ率を2%に誘導することで需要不足を解消し、日本に住む自然人の幸福を高めることにある。
インフレ率も、企業収益も、財政再建も、すべてはそのためのプロセスであるはずだ。