【輪郭】黒田総裁の円安発言の真意

日銀 黒田総裁の国会での発言により急激な円高が進んで一日、ドル円相場は落ち着きをとりもどしたようだ。
ここでは、黒田総裁の真意を邪推してみたい。

実質実効為替レートは1980年代前半の水準

黒田総裁は発言の中で実質実効為替レートを引いて、これ以上の円安は進みにくいと述べた。
では、円の実質実効為替レートはどうなっているのか。

ドル円と実質実効為替レート

  • 赤が実質実効為替レートで、下方が円安
  • 青がドル円レートで、上方が円安

である。
これを見るとわかるように、今の円安水準は

  • ドル円で見ると、リーマン危機前の水準に過ぎないが
  • 実質実効為替レートで見ると、1980年代前半の水準

である。
経済実勢をよりよく示すのは実質実効為替レートとされているから、現状が極めて円安であるという指摘は全く正しい。
内閣官房参与である浜田宏一イェール大教授が4月13日のテレビ番組で同趣旨の指摘をしていたのは記憶に新しい。

ドル円と実質実効為替レートで見え方が違う理由

では、なぜドル円と実質実効為替レートでこうも差が出るのか。
実質実効為替レートとは、すべての通貨と円との為替レートを取引シェアで加重平均したものだ。
だから、貿易等の取引シェアが変化すれば、平均算出時の重みが変化する。

円が変動為替相場制に移行し、日本が貿易黒字を積み重ねる中、円高が進行した。
ある通貨との間で円高となれば、輸出が減少し、取引シェアが減少する。
すると、その通貨の重みが減るため、その通貨に対する円高の要因がそれほど効かなくなる。
つまり、日本産業が為替の変動に適応していくと、その原因となった為替変動が実質実効為替レートに現れにくくなるのである。
その意味で、過去のドル円での円高に比べると、実質実効為替レートでの円高は小さく表れてきた。

だからと言って、今の実質実効為替レートでの円安がそれほど円安でないというわけではない。
実質実効為替レートは円高と同じように円安も小さく見せる面がある。
さらに、すでに円高に順応した日本経済にとって、円安への揺り戻しはいいことばかりではない。
一度、厚着に衣替えをして体調を慣らしたところで、もう一度薄着に着替えろというようなものだ。

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