【輪郭】黒田総裁の円安発言の真意

円安に潜むリスク

多くの人が言うように、ここからの円安はいいことばかりではない。

  • 輸入物価の上昇
    円安は輸入物価を上昇させ、日本が享受していた安い原油価格を相殺し、食品など輸入品の価格上昇を引き起こす。
    これも物価上昇ではあるが、この物価上昇は需給ギャップが解消した現在となってはメリットをほとんどともなわない。
    需給が締まることでの物価上昇なら、それは供給者側にとっては朗報なのだが、輸入物価の場合、そのメリットは海外に流出する。
    輸入物価は消費者の負担を増大し、国内経済を冷やす。
  • 金融政策の対称性を奪う
    最近の円安の主因の一つはFRBの利上げを織り込むものだった。
    FRBの利上げは金融政策の正常化を意味し、それを実現した後、米国は他国に正論を述べることができるようになる。
    つまり、量的緩和を含む通貨安政策を非難する可能性が戻ってくる。
    そのような環境で、さらに円安が進んでいる場合、日本が追加緩和をする余地はほとんどなくなる。
    これは、日銀から緩和方向の政策を奪い、引き締め方向のみの可能性しか残さなくなる。
  • 円の不安定化
    日本国債・日本円には大きく売られてしまうリスク・シナリオが存在する。
    日本の財政問題に根差すリスクで、実現確率は高くないものの、全く無視していいものでもあるまい。
    現状、国債市場は日銀がほぼ統制しており、このリスクの調整弁は為替相場だ。
    結果、国債が売られる代わりに円が売られる可能性がある。
    売りが売りを呼ぶ事態を未然に防止するため、円安ペースはある程度緩慢にしておくべきだ。
  • 消費増税への備え
    2017年4月の消費増税の前後には、必ず需要の山谷が訪れる。
    前回の増税時は景気拡大期であったにもかかわらず深刻な谷があった。
    次回も同様の谷への備えが必要だ。
    その際、インフレや円安が進んでしまっていれば、金融政策での手当てを取れなくなる可能性がある。
    財政状況次第では、財政政策での手当ても限定的になりうる。

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