【輪郭】黒田総裁の円安発言の真意

孤軍奮闘する黒田総裁

黒田総裁のこれまでの政策・言動を見る限り、たいへん用意周到な策士であることがわかる。
自分の言動がどう受け取られるかも十分に計算している。
しかも、元財務官。
今回の円安発言が意図しないものだったはずがない。
政治の不作為にしびれを切らして、あえて為替に注文を付けたのだろう。

今回は口先介入だったが、実際に為替介入となれば、それを決めるのは財務省。
しかし、黒田総裁の発言への反応を見ると、今や日銀も為替介入を行えるようになったことがわかる。
おそらく現在、日銀が量的緩和の調節によって為替を大きく動かすことは可能であろう。
量的緩和政策とは、以前議論になった非不胎化介入と似た営みである。
それが大きな効果を及ぼすのと同様、その巻き戻しの効果も大きいはずだ。
それだけに、市場は黒田総裁の発言に大きく反応した。

125円はドル円の壁に

最近、世界的に金融政策の転換点を模索するメンタリティが増えてきた。
結果、黒田総裁の発言もそういう文脈で取られる傾向がある。

筋論から言えば、為替介入は財務省の専管事項だ。
しかし、黒田総裁が実質実効為替レートに言及した意味は大きい。
1980年代前半と言えば、バブル前夜と言ったところ。
この水準より円安とするには、大きな材料が必要となろう。
さもなくば、経済がそこそこ回復しつつある中、いよいよ円安に対する批判が起こりかねない。


山田泰史山田 泰史
横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部化学科卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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