リスク・オフで円高にふれる本当のワケ

世の中には、円が安全通貨であるなどという誤解がある。
「○○危機への懸念から、比較的安全とされる円が買われ、円高が進みました」などというニュースがそれだ。

財務相の誤解

Reutersによれば

安全通貨とみされることについて麻生財務相は
「自国通貨が安全な通貨と思われて何が悪いのか。
自国通貨が安定していることはいいことだ」と指摘。
安全通貨として「それだけ円の信用が高くなっていることはいいことだ」と語った。

という。
麻生副総理の完全な誤りとは言えない。
誘導尋問した記者の悪意・誤解が誘発したものだろう。

円は安全通貨ではない

リスク・オフで円が買われる現象については以前も説明した。

ほとんどすべての人が円安を予想している中、円が安全通貨というのは明らかな誤り。
リスク・オフで円が買われるのは、円が安全通貨だからではない。
円が調達通貨だからだ。

真相は円キャリーの巻き戻し

仕組みは日本のカネ余りと円キャリー取引だ。
日本人は貯蓄好きの上に量的緩和、結果カネ余りの状態だ。
円は世界一低金利な通貨の一つなので、投資のための調達通貨となりやすい。
円を調達通貨として国内外のリスク資産へ投資が行われる。

リスクが低い環境では、リスク・オンとなり、円が売られ外貨が買われ、外貨資産へ投資される。
(実際には、為替売買が行われるとは限らず、デリバティブが用いられることも多い。)
リスクが高くなると、リスク・オフとなり、外貨投資が手仕舞いされ、円が買われる。
つまり、リスク・オフの円高だ。

安全通貨との誤解で財政規律はさらに緩む

そもそも、ギリシャと並んで財政が危機的な先進国である日本の通貨が安全通貨であるはずがない。
円を発行している日銀の最大の資産は、日本国債だ。
政府・日銀はリフレ政策を進め、自ら通貨の価値を貶めようとしている。
リフレ政策は苦肉の策であり、その副作用(一側面)は通貨の減価だ。
「円が安全通貨」というのは、そうした副作用を覆い隠すようなレトリックに使われかねない。
世にも恐ろしい「誤解」なのである。