浜田宏一教授:金融緩和が為替を均衡水準へ収れんさせる

内閣官房参与 浜田宏一イェール大教授が内閣府主催の国際会議で、TPPで米国が提案している為替操作排除の検討について批判した。
「各国が最適な物価上昇率と雇用を追求して金融緩和を進めることで為替は均衡水準に収れんするとの自説を強調した」とReutersが伝えている。

TPPの抜け穴

TPPとはそもそも自由な貿易や通商を推し進めようという枠組み。
その最たるものは関税障壁だが、仮に関税を取り払うことができたとしても、非関税障壁が残っていては片手落ちだ。
非関税障壁には不合理な国内規制などがあろうが、為替操作も重要な要素。
関税を課すのをやめる代わりに、自国通貨を安く誘導するという抜け穴も考えられる。

仮にTPPで為替操作排除が盛り込まれるようになれば、自由変動相場制を採用していない参加国は大きな不安を抱えることになる。
為替管理を為替操作と糾弾され通貨高を強いられれば、その国の貿易収支はあっという間に悪化してしまう。

ターゲットは日本

しかし、米国の主たるターゲットはそうした途上国ではないようだ。
WSJは5月、米国でのTPP法案の審議に関連した米自動車業界の声を伝えている。

米自動車大手フォード・モーターの海外渉外担当副社長、スティーブン・ビーガン氏は「為替操作こそが全ての貿易障壁の源だ」と述べた。
同社をはじめとする米自動車メーカーは、海外での競争力強化を狙って自国通貨安を誘導している国を対象とした制裁法案を後押ししている。

ビーガン氏は「われわれは世界のあらゆる自動車メーカーと競争できるが、日本銀行には太刀打ちできない」と話し、日銀による通貨安誘導への懸念を表明した。

TPPにおける為替操作排除の提案はこうした米国内の要望を背景としたものだ。
そこでターゲットとされているのは日本であり、日本銀行であり、異次元緩和による円安誘導だ。

貿易と為替は無関係という主張

さて、浜田宏一教授の発言の話に戻ろう。
Reuters記事は短いものなので、すべてを理解するのは難しいが、主たる主張は

「本質的に無関係な為替相場問題を貿易問題に持ち込み、自由貿易の利益を抑止すること」で「不適切だ」

というものだったらしい。
これは、麻生財務相の発言とも一致するトーンである。
さて、では貿易と為替が「無関係」という根拠は何なのか。

中央銀行が「自国にとって最適な物価上昇率と雇用を目指し金融緩和を行えば、他国の通貨の価値が上昇し需要が減少するが、その国も金融緩和を実施することで2国とも同時に金融政策上も目的を達成できる」と説明。
具体例として、浜田氏は両大戦間期の先進国で「金本位制を放棄し、独立した金融政策を採用した国々は(大不況からの)回復が早かった」と指摘した。

本当にこの2文がスクウェアな要約であるとすれば、なんとも大胆な発言のように聞こえる。