ロバート・シラー:詐欺、のろま、金融市場

資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授がProject Syndicateに論文を寄せている。
ちゃっかりしたものだが、シラー教授の新刊本の宣伝だ。

新刊のタイトルは「Phishing for Phools: The Economics of Manipulation and Deception」。
「サルにもわかるフィッシング詐欺:操作と欺瞞の経済学」とでも訳しておこうか。
テーマはフィッシング(だまし)だ。
シラー教授は本のテーマを次のように説明する。

アダム・スミスに欠けているもの

(抄・意訳)

アダム・スミスは、個々人が自由に自己の利益を追求すれば、競争市場が社会全体の利益を与えてくれるという「神の見えざる手」を説いた。
アダム・スミスは正しかった。
自由市場は、個人にも社会にも等しくかつてない繁栄を与えてくれた。
しかし、私たちは操られたり、だまされたり、あるいは単に受動的に勧誘されてしまうことがある。
そのため、自由市場においても、私たちは自分や社会にとってよからぬものを買ってしまう。
アダム・スミスの見方には、こうした補足が必要だ。

シラー教授は、あらゆるフィッシングのうち深刻なのが金融市場という。
2009年以来の株と不動産ブーム、先月の世界資産市場の混乱など、旬な話題だからだ。
どんな、フィッシングがあるのか:

たくさんの楽観論者が損失を被り、資産価格のボラティリティは高く、多くのフィッシングがかかわっている。
不適切な住宅ローンが勧誘され、企業は資産を取り上げられ、会計士は投資家を欺き、FAは何もないところからもうけ話を生み出し、メディアはとんでもない話を報じる。

モラル・ハザード犯人説

厄介なのは、こうした被害が連鎖することだ。
騙された人が倒れると、その損失が次々と波及しかねない。
そのため、金融機関が破たんすると、それを税金で救うべきかという議論が起こる。

1929年の大暴落における政府の対応は過小で遅いものだった。
結果、「暗黒の時代」が訪れ、1930年代の大恐慌、第二次大戦まで続いてしまった。
2007-09年の金融危機の時にも同じことが懸念されたが、各国政府・中銀は迅速に協調して適切な刺激策を講じた。
回復の勢いは弱いが、新たな暗黒の時代というにはほど遠い。

当時の対策が早すぎ、強力すぎたとの批判がある。
危機の主因はモラル・ハザードだと言うのだ。
当局の救済を見込んで、リスク・テイカーが過度なリスクを取ったという。

こうした議論は確かに世界中の金融危機で繰り返されてきた議論だ。
高給取りの銀行員や証券マンを救うべきなのか、といった感情的な面も含まれた議論になる。
純粋に社会にとってどうするべきなのか。