ロバート・シラー:投資成績と人間の価値は別のもの

資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授がNY Timesにコラムを寄せている。
市場の心理に鋭く切り込む教授は、来週のFOMCを前にした心の準備を説いている。

人間はコンピューターのようには動かない。
それが人生を楽しくするのだが、エコノミストには深刻な落とし穴になりうる。
すべての事象が予想可能に思えたとしても、主要市場の短期的な方向性を予見するのは極めて難しい。

言うまでもなく、シラー教授は来週のFOMCでの利上げ(の可能性)を語ろうとしているのだ。
教授は利上げがもたらす市場への影響を予想するため、いろいろな角度での分析を試みる。

まずは、先例。
しかし、長い低金利からの利上げという先例は1941年の一度きりしかない。

次に、論理実験。
国債利回りの上昇は株式・不動産などの価格を下落させるという論理が成り立つ。
しかし、一方で利上げが経済回復の結果と見れば、資産価格が上昇するとの論理もありうる。
これはよく強気派対弱気派で応酬される議論である。

興味深いのは、インフレにかかわるロジックだ。
シラー教授は「経済にとっていいニュースはインフレにとって悪いニュースになりうる」と説明する。

経済が成長するとインフレが起こる傾向にある。
インフレが起こると、FRBがわずかに利上げしても、実質金利が低下または横ばいになる可能性がある。

FRBによって引き上げられるのは名目金利だ。
その上げ幅が小さいところに大きなインフレが加わると、実質金利が下がりうるという議論である。
本当にそうなるなら、不思議なことにFRBは利上げによって金融緩和を実施できることになる。
こうした議論は、市場の織り込み具合によっても大きく影響を受ける。
大きなイベントを控えた相場とは、心理戦の様相を一層濃くする。

シラー教授は、大相場の前の心の持ち様について説明する。

投資家の中には投資の成功を個人的喜びにしている人がいる。
投資の成功こそが自分自身の価値であると解釈しているのだ。
アイデンティティやエゴが問題となり、とても危険になる。

投資にのめり込みすぎて、その成功・失敗を人間としての価値の尺度にしてしまうことのないように諭しているのだ。
こうしたのめり込みは、失敗への耐性を奪うだけでなく、予想・判断までも狂わせてしまう。

2008年の金融危機後、小型株や住宅に張っていた野心家たちは、自身のアイデンティティを失いかけた。
再び起こりうることだ。
私たちはただ待って結果を見るしかない。

FOMCは予想どおりの結果となるか、その結果を受けて市場はどう動くか、それを正確に予想するのは至難の業だ。
今できるのは、大きなポジションを閉じておくことぐらいだろうか。
これまでの上げ相場はきつすぎて、容易にポジションを閉じれない人も多いのだろう。