ローレンス・サマーズ:利上げが不況到来に間に合わない

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)がFT・Washington Postによせたコラムで、FRB利上げ後に迫る難題を論じている。
利下げ余地が十分ないうちに訪れるであろう不況である。

サマーズ氏は、来週のFOMCで利上げが決定されても、経済・市場の動揺は大きくならないと予想する。
すでに、経済・市場は十分に利上げを消化・織り込んできている。
仮に利上げが始まっても、年1%程度と緩やかなものになると予想されている。
問題は、循環的にやってくる不況の方だ。

歴史の経験から言えば、不況時には300ベーシスを超える利下げが必要になる。
FRBが金融引き締めで経済回復を損ねないためには、年100ベーシス程度の利上げペースとなるだろう。
それがうまくいったとしても、不況の前に利下げの余地を確保できない確率は高い。
これを理解すれば、信頼度は低下し、需要も阻害されるはずだ。

ちなみに内外での経験によれば、経済回復後2年以内に下降に転じる確率は1/2、3年以内だと2/3超だという。
300ベーシス利上げするのに3年かかるとすれば、不況入りに間に合わない確率も2/3超となる。
FRBが利上げの強い決意を示している理由もよくわかる。

間に合わなければ、また非伝統的金融政策で対応できるではないか。
こんな主張をする人も多いはずだ。
しかし、サマーズ氏はこの見方に否定的だ。

市場が正常に機能し、すでに中期金利が極めて低い環境では、さらなる量的緩和の効果は極めて疑問だ。
マイナス金利にも大きな限界がある。
FRBがゼロ近傍の低金利に逆戻りしてしまえば、フォワード・ガイダンスを行おうとも、信頼されなくなってしまう。

特に最後の一文は胸に刺さる。
バーナンキのジョークを思い出せば、量的緩和政策とって期待に働きかけることがいかに重要かがわかる。
その期待が操れないとなれば、実体経済に望むような効果を及ぼしうるのか。
金融市場はお祭りに戻るのだろうが、実体経済がついてこなければ、結果は見えている。

フォワード・ガイダンスが効かなくなることの本当の怖さはそれだけではない。
FRBが十分な利上げを実行できなければ、量的緩和は底なし沼なのではないかとの懸念がつのる。
それは、中央銀行や通貨への信認に関連する重要なリスクである。