【輪郭】小型株効果と上場廃止バイアス

この春、弊社にとっては少々ショックな発見があった。
それは弊社の名称に関連したことなのだが、市場が閑散とするこの時期、ご紹介するにはいいタイミングかもしれない。

小型株効果についての学会の常識

今年の3月、UCLAのジェーソン・スー教授が日本で講演した。
この内容に目を見張った。

小型株効果はあると皆さん信じている訳だが、実は、学者の間では、小型株効果にみえたものは、データ上の過ちであって小型株効果は存在しないというのは学界では良く知られていることである。
30年にわたって小型株の効果が謳われてきたわけだが、最も長い期間の米国を見てみるとその効果は出ていない。
すなわち、小型株バスケットと大型株バスケットのシャープレシオを比較すると全く同じである。
米国以外の市場、すなわち英国、欧州、日本の市場を見ても小型株のバスケットが大型株のバスケットをアウトパフォームすることは一切見られない。

(出典: 日本証券アナリスト協会の講演録)

小型株効果というものは存在しないというのだ。
しかも、それは学会の常識らしい。
ここで述べられている「データ上の過ち」とは何か。
それは上場廃止バイアス(delisting bias)を指すのだと言う。

上場廃止バイアスの見逃し

小型株は大型株に比べると上場廃止になる確率が大きい。
かつての研究では、そうした銘柄の最後の売却価格をビットアスクのスプレッドの中間点と仮定していた。
ところが、こうした仮定は、その後流動性を失う銘柄に対してあまりにも楽観的なのだという。
皆が在庫を吐き出すとすれば、価格は5割引、7割引、8割引になってしまう。

この指摘が意味するのは、上場が続く限り小型株効果は存在するが、上場廃止のところでプラス分が吐き出されるということ。
やはり、市場はそこそこ効率的だということ。

優れた投資家からすれば、上場廃止にならない銘柄を選べばいいのかもしれない。
また、弊社のようにパフォーマンス評価にシャープ・レシオ以外を用いている投資家も多いだろう。
そうしたことは気休めにはなるが、あくまで気休めにすぎない。

弊社の社名の由来

ほとんど明かしたことがないが、弊社名称の「SCI」は「Small Cap Investemnt」の頭文字。
つまり小型株投資だ。
弊社は国内小型株の銘柄選別で戦おうと作られたエンティティであり、当初8年余りその戦略で目覚ましい成績を上げた。

今年の春、上記の「学会の常識」を知った時は本当に驚いた。
自社が強みを持っている分野が実はそれほどおいしい分野ではなかったというのだから。
だからと言って不利な分野でない限りやり続けることにはかわらないのだが、やはりおいしい分野であるに越したことはない。

長期投資だけでは成功が保証されない

もっとも、リーマン危機以来、弊社の戦い方も随分変化した。
小型バリュー株の銘柄選択だけでは市場の大きな下落をかわせない。
長期投資を基本としているからかわす気もないのだが、それでも下落時には悲しい気持ちになる。
そこであえて、ポートフォリオに資産クラスと地域での分散を取り入れるようになった。
かつて完全に無視していたグローバル・マクロの視点を取り入れることにしたのである。

そうした変化はあったものの、弊社の最大の強みは国内小型株のファンダメンタルズ分析による銘柄選択にある。
そうした投資家にとって、小型株に投資妙味がないという現実はやはり悲しいことだ。
むろん、強みを生かして上場廃止となる銘柄を避けるよう努力するのだが、そうしたことが確率現象として生じうるのもまた現実なのである。


山田泰史山田 泰史
横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部化学科卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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