エラリアン:ボラティリティと流動性低下の悪しきサイクル

独Allianz首席経済アドバイザーMohamed El-Erian氏がBloombergに寄せたコラムで、市場の混乱の本質的原因を解説している。
金融政策の転換がボラティリティを増大させ、金融規制の強化が流動性低下を招いたと指摘した。

エラリアン氏は現在の市場混乱の原因を分析する。
世の中では中国や原油などの市場に原因を求める意見が多いが、それだけで説明しきれるものではないという。
もっと根源的な変化が経済・市場に起こっているとし
・ボラティリティ抑制の終了
・市場流動性を低下させる金融規制
を挙げた。

この2つの変化はお互いに強め合い、金融の不安定・危険を強調してしまう。
これが長く続くほど、ボラティリティは大きくなり、経済・企業のファンダメンタルズの逆回転の恐れが増す。
不安定化のリスクが高まれば、それが金融市場に跳ね返り、経済・金融の混乱の悪しきサイクルに火を注ぐ。

なんとも悲観的な構造分析だ。
エラリアン氏は、私たちが向かうであろう逃げ道にも先回りし潰してしまう。
もはや量的緩和のみでは対症療法にもならないという。

FRBが大規模なQE4に逃げ込んでも、そのスタートから経済的効果に大きな疑問が持たれることになる。
それが効果を上げるためには
・経済成長に資する構造改革
・より柔軟な財政政策
・定着してしまったデット・オーバーハングの解消
が必要だ。

エラリアン氏がつけた必要条件は、米国ならずともなかなかハードルの高い条件だ。
財政政策を除けば、仮に実行しても、効果が現れるまでに長い時間を要してしまう。
即効性のある財政政策も、よくよく内容を吟味しないと単なるバラマキに終わり、後の財政再建時につけを払うことになる。
エラリアン氏は、各国の政治家に厳しい注文をつけてコラムを終えている。

将来は、今後数週・数か月の間の選択による。
とりわけ、不作為や党間抗争の中、中央銀行に過度な負担を強いてきた政治家が仕事をすることが重要だ。

エラリアン氏は「今後数週・数か月」と期限を切っている。
残念なことに、(中央銀行でなく)政治家の中にこの切迫感を共有する人は少ないだろう。

ここで「中央銀行」の原文は「central banks」であり、複数形だ。
つまり、この議論は米国に限ったことではない。
思えば、この指摘、日本の政治にもピッタリと合う。
「経済を最優先」としながら、その実は日銀の異次元緩和に頼るばかり。
やれることはもっとあったろうに、選挙では争点ともしなかった安保法制に大きなエネルギーを費やした。

程度こそ議論があるかもしれないが、米国の金融政策の転換が中国の経済・市場、コモディティ市場に悪影響を及ぼしたのは間違いない。
いつかはやってくる日本の量的緩和政策の転換点もまた、経済・市場に少なからぬ影響を及ぼすのだろう。
そう思うからこそ、追加緩和まで予想されているのに、日本の市場は下げている。
先行した米国で起こることがつぶさに見えるがゆえに、量的緩和で先食いしたつけを早めに払い始めなければいけないのだ。
では、日本の政治は深みにはまる前に適切に対応できているのだろうか。