マーク・ファーバー:マイナス金利も無現金社会も成功しない

スイス人著名投資家マーク・ファーバー氏が日欧のマイナス金利政策について特色ある論評をしている。1)
完全な支配・統制をもくろむ《Big Brother》が、市民の経済活動を管理しようとしているという。

日欧に続いて米国でも導入が囁かれるマイナス金利政策。
ファーバー氏は「マイナス金利は世界を救えない。保証するよ」と斬って捨てた。

マイナス金利政策は現金保有を不利にする。
こうした政策が選択される背景として、ファーバー氏は《陰謀論》とも言うべき持論を展開する。
ある集団が世界の統制を強化しようという企みであるという。

彼らはあなたがどこにいて、何をして、何を見ているかを知りたがっている。
ジョージ・オーウェルが描いた社会が実現しつつあり、そこでは彼らがすべてをチェックできる。
現金は、誰かがどこかに行って何かを買うための手段であり、現金であればチェックできないのだ。

面白い。
面白すぎる。
自由主義経済・自由な市場を希求する考えとは、こうした社会観と隣接しているのか。

《陰謀》はこれでは終わらない。
ファーバー氏は、《Big Brother》が現金のない社会を目指すと予想し、それもうまくはいかないと言う。
通貨を廃止すれば、地域バウチャーが乱立するだけだという。
また、そのためには金の没収も行わないといけない。

現金廃止論は、隠れ蓑をかぶって表れるという。

主張のしかたはこうだ:
「犯罪防止のために無現金社会に移行したい。」
まったくナンセンスだ。
彼らは私たちを統制したいがために無借金社会を求めているのだ。

最近、ECBが500ユーロ札廃止の検討を始めたと報じられた。
表向きの理由は犯罪防止だ。
こうした動きについて、ローレンス・サマーズ元財務長官は賛辞を寄せている。2)

欧州だけがこうした施策をするより、例えば50-100ドル以上の紙幣は発行をやめるというような国際的合意がより望ましい。

日本人からすれば、こうした感覚は理解しがたい。
日本で1万円札が廃止されたら、さぞかし不便だろう。
それに、1万円札が廃止されたら犯罪が減るからという議論自体、今一つピンとこない。
500ユーロ札がなくなっても200ユーロ札があり、1万円札がなくなっても5千円札がある。
そんなに大きな効果があるのか。
携帯電話が犯罪に利用されるからといって、サマーズ氏は携帯電話を廃止すべきと言うのだろうか。

こんな思いを巡らし、500ユーロ札の話では、本当の目的はタンス預金排除であろうと推測した。
そして、それに隣接する話としては、財政悪化がやまない中、可能性がゼロでなくなりつつある財産税
ただし、これは新円切り替えが行われれば無力化されてしまう。
新円切り替えは、高額紙幣廃止や金没収と似たコンセプトとも言える。
こうしてスコープを拡げていくと、スイス出身の老体が巡らす陰謀論もあながち被害妄想とは言えなくなってくるのである。

(出典)
1) Money Metals Exchange, Value Walk (2016), 「Marc Faber On Cashless Society Insanity And Why Wall Street Hates Gold」, http://www.valuewalk.com/2016/02/marc-faber-on-cashless-society-gold/ (参照2/19/2016)
2) Lawrence Summers (2016), 「It’s Time To Go After Big Money」, http://larrysummers.com/2016/02/16/its-time-to-go-after-big-money/ (参照2/19/2016)