PIMCOのGross氏が敗北宣言、米国債は今が底?

本日の日本経済新聞総合面にて、PIMCOのGross氏がこの半年余り米国債を売ってきたことを「敗北宣言」したと大きく取り上げられている。
Gross氏は米国一有名な債券マネージャーであり、これまでもこのコラムで度々取り上げてきた。

米国債にBearでベットしたが失敗

Gross氏は債券投資家の立場から、米国の財政悪化、インフレ懸念を警告し続けてきた第一人者である。
日経の記事によれば、

ピムコの旗艦ファンド「トータル・リターン・ファンド」は、今年2月時点ですべての米国債を売却するとの大胆な戦略を採用した。
・・・
自らの投資判断は誤りだったと表明。
足元では再び米国債に投資する姿勢を見せている。

とある。

この元記事と思われるWall Street Journalの記事は、

この数週間、PIMCOの共同創業者Gross氏は、米国債への賭けをしくじったために、眠れない日々を過ごしたと語った (HSCI訳)

と書き出している。

正確には何が起きたのか。
WSJの記事にはこう書かれている。

2月にファンドの米国債をすべて売り払い、3月にデリバティブを使って国公債に逆張りした (HSCI訳)

つまりは、米国債に対してSell Shortのポジションを取っていたことが分かる。

ソブリンのパラドックス

何かどこかで聞いた話だ。
国債の信用力が落ちれば、国債金利は上がると思いがちだが、米国も、そして日本もそうはなっていない。
財政・経済のリスクに嫌気した投資家が、かえって信用度の落ちた国債を買う。
言い換えれば、デフレだから国債を買う
そんなパラドックスにPIMCOは負けたことになる。

WSJの記事によれば、この20年でTotal Return Fundの利回りがベンチマークを下回ったのは僅か4回(1994, 2002, 2006, 2008年)。
ところが、今年はこの賭けが外れたことで、大きくベンチマークを下回る成績だ。
PIMCOとしても、自らが運用する世界最大の債券ファンドの低迷をこれ以上手をこまねいて見ているわけに行かなかったということだろう。

よく考えてほしい。
財政が悪化し、ソブリンの格付が下がり、インフレ懸念が高まっているのが今の米国だ。
それが米国債の下げの要因となるという見方自体に誤りがあるはずはない。
それなのに相場が逆に振れたのは、上記のような需給の要因がそれをオフセットする以上に大きかっただけだ。

PIMCOが米国債をLongに戻したことは長期的な視点によるものではあるまい。
米国の双子の赤字について、これまでのところ何ら解決の方策が具体化していないのだから。
長期的にはやはりShortだが、米国債の下げまでにまだ時間があるとみて、方向転換したのだろう。
ベンチマークを意識し続けなければいけない機関投資家の性である。

米国の「日本化」は日本にもマイナス

なぜ、米国債の下げまで時間があると見たのか。
これこそ、米国が「日本化」し、New Normalにどっぷり浸かったと見たからではないか。

以前、このコラムで、米国は日本の後に景気低迷に陥ったが、日本を尻目にさっさと回復するかも知れないと述べた。
しかし、そうではないのかも知れない。
欧州も米国もダメ。
これでは、日本に他力本願はない。