バーナンキ:マイナス金利の意図せざるインセンティブ

ベン・バーナンキ前FRB議長が自身のブログ 1) でマイナス金利政策について論じた。
その中で、マイナス金利政策に潜むパラドクスを問いかけている。

米国が導入すれば金融システムのリスクに

ECB・日銀がマイナス金利に踏み出す中、米市場でもマイナス金利導入をねだる声が聴かれる。
こうした風潮を受けてのバーナンキ氏のブログだが、その表現は慎重だ。
後任者の足を引っ張らないよう、逃げ道を残した書き方に終始している。

金利はゼロのところで不連続とはなっていないこと、マイナス金利にかかわるコストは制御可能なことを説明する一方、政策の効果についても限定的と書いている。
いずれ、マイナス金利はタンス預金や現金保管によって限界となるからだ。
マイナス金利を大きく拡大できたスイスやスウェーデンとは異なり、米国では限界が近いという。
米国で大きなマイナス金利を導入すると、金融システムのどこかに破綻を来しかねないからだ。

マイナス金利はどこまで?

FRBが2010年に見積もったところでは、-0.35%が限界だという。
ECB副総裁は-0.40%のところで限界を口にし出した。
岩田一政 元日銀副総裁は-2%と踏んでいるが、これは他と比べて大きすぎるような印象だ。
日本は欧米に比べて通貨の保管にお金がかかるということだろうか。
日本にはまだ2方向の拡大余地がある。
マイナス金利拡大と、階層構造の段階的撤廃だ。

米国のマイナス金利はありそうにない

さて、米国におけるマイナス金利の可能性だが、バーナンキ氏は低いと見ている。
メリットもコストも薄いからだ。
それでも、可能性をゼロとはしない。
金融緩和が必要なのにQE再開が正当化できないような事態が起こった場合、残された手段は節度あるマイナス金利ぐらいしかないからだ。

マイナス金利の誤ったインセンティブ

それにしても、主要中銀の中枢にある人・あった人たちが、他にやれることがないとか、財ではなく通貨の保管料がいくらかとかをまじめに論じなければいけないとはどういうことか。
バーナンキ氏は皮肉りながら、あるパラドクスを提示する:

「経済にとって重要な長期金利にマイナス金利が大きな効果を及ぼし続けるため、中央銀行は市場参加者にマイナス金利が長期間継続すると信じさせなければならない。
しかし、市場参加者がそう信じたとしたら、さらに倉庫を買って現金保管にかかわる他のコストを支払うインセンティブを持つだけだ。」

悪貨がはびこる中での投資

マイナス金利の目的は、過剰貯蓄を投資・消費に回すことだ。
しかし、それが、現金の倉庫保管を助長してしまう。
こんな矛盾はなぜ起こるのか。
中央銀行が自ら通貨の重要な機能、価値の保存機能を損なおうとしているからだ。

投資家の《真の通貨》探しはまだまだ続きそうだ。
悲しいことに、この探求には困難が付きまとう。
悪貨は良貨を駆逐する。
望ましくない政策は国境を越えて伝染しがちだ。

(出典)
1) Ben S. Bernanke (2016/3/18), 「What tools does the Fed have left? Part 1: Negative interest rates」, http://www.brookings.edu/blogs/ben-bernanke/posts/2016/03/18-negative-interest-rates (参照3/20/2016)