ローレンス・サマーズ:市場独占に目を向けるべき

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、好調な米企業収益・株式市場に懸念を呈した。
実質金利が低下し、設備投資もさえない中、企業収益や株価ばかりが上昇する状況を危ぶんでいる。

高い株価は高い資本リターンを示唆

サマーズ氏は、トービンのQ・バフェット指標などから見て、米国株は歴史的に極めて高位にあると指摘する。1)
経済学では通常、利潤率が資本の限界生産性を反映するものと仮定するので、高い株価は

  • 既存の資本が高く値付けされている
  • 新たな資本への投資の利得が高い

と解釈されうるという。

低金利下でも高い資本リターン

サマーズ氏の問題意識はこうだ。
趨勢的停滞を議論している中、なぜ株価や資本へのリターンが高いのか。
趨勢的停滞論では、投資性向の低下が慢性的な総需要不足をもたらし、完全雇用のための実質金利の達成を難しくすると主張する。
ところが、実質金利は低位かつ低下傾向を続ける一方、事業投資は循環的な水準かやや下ぐらいを維持している。
まとめると

  • 実質金利は低く、低下傾向さえある
  • 設備投資は平均からやや低いぐらい
  • 資本へのリターンは高い

こうした温度差は何によるものなのだろう。

アノーマリーの原因

こうしたアノーマリーについて、サマーズ氏は3つの要因を検討している。

  • 投資リスクの増大により、リターンも上昇
    VIXがそれほど高まっていないこと、リスクが高まれば株価も下がっていいことから否定的。
  • QEによって利潤率と利回りの格差が拡大
    スワップ・スプレッドはマイナス圏にあり、(対スワップの)米国債のスプレッドは過去になく高いことから否定的。
  • 生産性向上ではなく独占力増大が利益を上昇させた
    「独占力が増大すれば、利益は高まり、企業が生産を制限することで投資が減り、資本への需要減退で金利が低下する。
    これこそ、近年見られた現象だ。」

市場独占の兆候

独占力の増大を匂わせる現象は多く見られるという。

  • 産業内での集中の進行
  • 大型M&A
  • 主要企業での利益拡大
  • 企業設立の減少
  • 機関投資家の台頭にともなう、同一株主による競合企業の保有
  • 革新的テクノロジー企業による自然独占

分配が偏り格差が拡大する

サマーズ氏は、利潤率と実質金利・投資の間のアノーマリーを説明できるのは独占力増大だとし、エコノミストはこの課題にもっと注目すべきと提言している。
格差は分配を独占することで拡大する。
サマーズの問題提起はその一断面を指し示したものだろう。

結果的に資本家が利潤を独占していると非難されているわけだ。
でも、資本家のみなさんも言いたいのかもしれない。
国債市場を独占しているのは誰だ??
今日び、被害者意識は至るところに存在する。

(出典)
1) Lawrence Summers (3/30/2016), 「Corporate profits are near record highs. Here’s why that’s a problem.」, http://larrysummers.com/2016/03/30/corporate-profits-are-near-record-highs-heres-why-thats-a-problem/ (参照3/31/2016)