ローレンス・サマーズ:少数のための貿易協定は支持されない

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、貿易協定や国際通貨制度のあり方について苦言を呈した。
全体にとってプラスであろうと、恩恵が一部に偏るような取り決めであってはならないと主張した。

サマーズ氏は、第2次世界大戦後の世界の統合プロセスを振り返っている。
経済や通貨の統合は、列強間の戦争を引き起こすことなく世界を豊かにしてきた。
あらためてこうした成果を見るにつけ、4人の大統領予備選候補の主張との温度差が気にかかる。
いずれの候補も自由貿易やTPPに懐疑的な見方をアピールし、国境を高くするよう主張している。

皆が自由貿易のメリットを理解しているのに、なぜこうも反対意見が起こるのか。
サマーズ氏は、その原因が「無知」ではなく、むしろ為政者の側にあるという。

「普通の人の利害への十分な配慮を怠り、エリートがエリートのために世界の統合プロセスを進めているからだ。
普通の人からすれば、こうしたプロセスは大企業が他国に進出するためのものにすぎない。
パナマ文書を見れば、グローバリゼーションとは、幸運な少数にだけ租税・規制の回避の機会を与えているのがわかる。
自国の大企業が外国企業に敗れれば、世界の統合によって普通の人が瓦解を迎えてしまう。」

だから、普通の人からの支持は得られない。
サマーズ氏は、このままなら、今のプロセスは立ち消えになってしまうと懸念する。
そのため、推進のありかたを変える必要があるという:

これまで 今後
主導 トップ・ダウン ボトム・アップ
重点 統合 事後の管理
内容 貿易協定 国際協調協定
方向性 市場開放 労働者の権利・環境保護
注力 貿易協定 租税・規制回避の防止

そして、最後に

「中間層の親たちは、子供が自分たちよりいい生活ができるか懐疑的だ。
しかし、そうした親たちの努力を助けることに重点を置かなければならない。」

と結んでいる。

(出典)
1) Lawrence Summers, The Financial Times (4/10/2016), 「Global trade should be remade from the bottom up」, http://www.ft.com/intl/cms/s/2/5e9f4a5e-ff09-11e5-99cb-83242733f755.html#axzz45W4nstdc (参照4/12/2016)