ルー米財務長官の会見の読み方

G20終了後のルー米財務長官の会見内容についての報道が面白い。
国際的金融メディアReutersとBloombergで書きぶりが少々違っている。

遠まわしで理屈っぽいReuters

Reuters記事1)の結論は、「一連の財務長官の発言からは、日本の円売り介入を認めない姿勢がうかがえる」というもの。
理屈・理念を重視しているようだ。
かなり遠まわしになっており、同時通訳が必要な表現になっている。
そこで、同時通訳をしてみよう。

「世界的に経済成長が鈍化し均一ではない」
→ 世界で見ると需要不足にあり、その程度は国によってまちまち。

「為替の近隣窮乏化策を避けること」
→ 通貨安による輸出強化で自国の需要を増やそうとすべきでない。

「財政黒字国は・・・特に強い調整措置を講じる責任がある」
→ 内需拡大による需要拡大を図るべきで、民間需要が見込めない今、公共支出を増やすべき。

「為替市場に無秩序な動きはみられない」
→ 最近の円高がファンダメンタルズを無視した動きとも急激すぎるとも言えない。

なるほど、こう訳してみると、米国はかなりドル円の水準に不満があることがわかる。
こうした見方の背景には、米大統領選も強く影響しているはずだ。
5月に伊勢志摩サミットを控える今、日本が円安を求めるのは難しいだろう。

直球勝負のBloomberg

Bloomberg 2) の結論も全く同じ。
ルー米財務長官が「日本が輸出ではなく内需押し上げに重点的に取り組むよう促した」と明記している。
重要発言部分を抜粋すると

「世界成長が弱い中で、日本は外需ではなく、内需に頼る必要がある」

「財政政策が全体的に景気を支援し、野心的な構造改革アジェンダで短期的に成長を引き上げる措置を優先することが重要だ。」
→ 日本は旧3本の矢の後ろの2本、財政政策と構造改革に重点を置くべき。

「外為市場は秩序を保っている」

「日本が将来の増税のタイミングをどう計画するか、増税が景気を悪化させないよう財政支出で埋め合わせるべきかどうか注意する必要がある」

「(2月の上海G20で)日本は通貨の競争的な切り下げを回避、サプライズがないよう互いに対話を行い、為替レートを目標としないことにコミットした。・・・すべてのG7、G20メンバーがコミットメントを守るよう期待する」
→ 日本は円安誘導をするな。

日本はこれまで非伝統的金融政策を(通貨安を目的とするのではなく)国内政策であるとして実行してきた。
しかし、その効果のほとんどが通貨安をチャネルとする効果であることは周知の事実だ。
浜田宏一内閣参与が、はるか昔から非不胎化為替介入を主張していたことは、一つの証左だ。
日本の非伝統的金融政策は、金融緩和というよりは非不胎化介入の隠れ蓑と言った方がいい面がある。

米国が始めたケンカなのだが、米国が矛を収めた今、日本が批判されている。
そうだとすれば、円安への2つのドライバーのうちの1つが封印されることになる。
2つのドライバーとは金融緩和と日本売り。
今は円高を甘受していた方がいいのかもしれない。

(出典)
1) Reuters (4/17/2016), 「近隣窮乏化策回避を、財政黒字国は為替依存避ける責任=米財務長官」, http://jp.reuters.com/article/imf-g20-japan-usa-idJPKCN0XE06H (参照4/17/2016)
2) Bloomberg (4/16/2016), 「米財務長官:日本は内需押し上げへの重点的取り組みを-記者会見 」, https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-16/O5P9VH6KLVRG01 (参照4/17/2016)