浜田宏一教授 vs アデア・ターナー卿に見る日本の将来図の違い

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最近ヘリコプター・マネーを巡って、内閣官房参与 浜田宏一イェール大教授と英金融サービス機構の元長官アデア・ターナー卿の間で論争があった。
つぶさに見てみると見解の相違の原因が見えてくるが、それがまた深刻なのだ。

ターナー卿:日本は債務を返済できない

ターナー氏は以前から日本が通常の方法では債務を返済できないと指摘し、インフレ高進による実質的債務削減を勧めてきた。
また、名目需要不足で苦しむ各国はマネタイゼーションで得た資金により財政政策を講じるべきと主張し、ヘリコプター・マネーも排除していない。

浜田教授:ヘリコプター・マネーは危険

こうしたターナー氏のヘリコプター・マネー擁護論に対し、浜田教授は反対意見を述べている。
アベノミクスは一定の成果を挙げているとし、ヘリコプター・マネーは適当でないと主張した。1)

「マネタイゼーションはインフレを高進させる可能性があり、日本の巨額な公的債務は危険なものだ。
この文脈により、MFFP(money-financed fiscal program、通貨での資金調達による財政プログラム ≒ ヘリコプター・マネー)の導入は物価を不安定化し、危険に思える。」

来年の消費増税には反対の浜田教授だが、財政への目配りは十分になされていることが伺われる。
日本はすでに量的緩和と財政拡大に舵を切っている。
この上、ヘリコプター・マネーと表現されるような政策が必要という主張はやはり唐突な感が否めない。

高橋是清の失敗の解釈

浜田教授は、反対の理由の一つに日本の大戦前後の失敗を挙げている。
高橋是清の財政拡大が高橋暗殺によりマネタイゼーションに変貌し、戦後のハイパーインフレを招いた例を挙げ、コントロールされたヘリコプター・マネーは実現可能性が疑わしいと主張している。
高橋是清の話は当コラムでも再三紹介したとおりだ。

こうした浜田教授の反対論に対し、ターナー氏は強く反論する。2)

「(高橋是清の例が)財政ファイナンス(=マネタイゼーション)固有の危険であるとする浜田教授の推論は信じられない。
ドイツがそうであったように、日本の立憲制は継続するデフレによっても破壊されていただろう。
そして、仮に高橋是清がマイナス金利を刺激し、そして政策を反転しようとしたら、同じ結果にあっていただろう。」

なんとも暴論に聞こえる。
ターナー氏が言いたい論点を繰り返すと

  • 戦前の日本がマネタイゼーションをやらなくても、デフレによって日本の立憲制は崩壊していた
  • 戦前の日本がマネタイゼーションをやって、後にExitを模索していたら、同じ結果(高橋が暗殺され、財政ファイナンスが続き、ハイパーインフレに至る)になったはず

ということだ。
この論を受け入れるとすれば、今の日本にも救いはないことになる。

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