ヌリエル・ルービニ:解けないパズルとポピュリズム

「終末博士」の異名をとるNouriel Roubiniニューヨーク大学教授が「生産性のパズル」について解説している。
生産性の伸びの鈍化が社会的・政治的不安定を生む前に、先進各国はこの問題に取り組むべきと主張した。

ルービニ教授は、2008年のリーマン危機の後、日米欧の生産性の伸びが低迷している点を指摘する。
生産性の伸びは、絶対的水準でも危機前との相対的比較でも低下している。
ところが、こうした生産性の動向もセクターごとに濃淡があるのだという。
教授は、次の6分野での技術革新がブレークスルーに差し掛かっているという:

エネルギー、バイオ、IT、製造技術、フィンテック、防衛技術

こう紹介した上で、なぜこうした技術革新がマクロ・レベルでの生産性向上に結びつかないのかと「生産性のパズル」と呼ばれる疑問を投げかける。
ルービニ教授は、生産性のパズルへの説明をいくつか紹介する。

  • 過去の産業革命と比較して現在の技術革新の経済への影響度は小さい。
    → 広範な分野で革新が起こっていることを考えると疑問符。
  • 実際の生産量を見過ごしており、生産性向上も把握しきれていない。
    → 過去の技術革新と何が違うかの説明、実証的な検証が不十分。
  • 技術革新と生産性向上には時間的遅れがある。
  • 潜在成長力・生産性向上はリーマン危機前から低下していた。
    この説明はローレンス・サマーズの趨勢的停滞論などと擦り合う。
  • ヒステリシス: 長引く周期的な停滞または力のない回復が次の理由で潜在成長力を低下させる。
    • 失業が長引くと労働者はスキル・人的資源を失う。
    • 新しい資本財には技術革新が必要であり、投資が少ないと長期的に生産性が低下してしまう。

ルービニ教授はどれが正解か、この現象が一時的なものか否か、まだわからないという。
それでも、先進各国は生産性のパズルに早急に真剣に向き合う必要があると主張する。
さもないと、緩慢な生産性向上が続き、賃金・生活水準が向上せず、ポピュリズムがさらに台頭するだろうからだ。
ポピュリズムの台頭は、自由貿易・国際化・移民政策・市場重視の政策の後退を意味する。

(出典)
1) Nouriel Roubini, Project Syndicate (6/3/2016), 「Populists and Productivity」, https://www.project-syndicate.org/commentary/productivity-paradox-explanations-populism-by-nouriel-roubini-2016-06 (参照6/7/2016)