佐々木融氏が釘をさすヘリコプター・マネー

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JP Morganの佐々木融氏がアベノミクスについてのコラムをReutersに寄せている。
足すものも引くものもない正論であり、是非一読されることをお勧めする。

ここでは、佐々木融氏がヘリコプター・マネーについて言及している点を紹介したい。
佐々木氏は金融政策を「痛み止め」、財政政策を「強壮剤」に喩え、合わせて出来上がるヘリコプター・マネーを「劇薬」と呼んでいる。
劇毒ではなく劇薬ならば上出来のように思えるが、佐々木氏は劇薬使用の帰結をこう書いている。

「最初は過去3年間と似たような反応になり、ポジティブな効果が出たように映るかもしれない。

しかし、その時の反応は、大胆な手術が行われ、実力が高まることへの期待ではなく、劇薬に頼り続けなければ生きていけなくなることへの期待、つまり何度も劇薬が投与されることへの期待となるだろう。」

この暗喩の連続を読み解いておこう。

  • 大胆な手術 = 構造改革
  • 実力が高まる = 潜在成長率が上昇する
  • 劇薬なしには生きていけない = 財政政策なしには景気を維持できず、日銀の国債買入れなしには国債市場を保てない
  • 何度も劇薬が投与される = ジンバブエと同じことが行われる

代入すると

《しかし、その時の反応は、構造改革により潜在成長率が上昇することへの期待ではなく、財政政策なしには景気を維持できず、日銀の国債買入れなしには国債市場を保てないことへの期待、つまりジンバブエと同じことが行われることへの期待となるだろう。》

佐々木氏はオブラートに包んで書いているが、実際のところは相当にむごいシナリオを提示しているのだ。

話は余談になるが、筆者は日銀が金利への手綱をもう少し緩めるべきと思う。
本当は量的緩和などやらなければよかったと思うが、もはや後の祭り。
量的緩和によって日銀がバランスシートを拡大してしまった以上、これを縮小するには相当な時間がかかる。
2013年のバーナンキ・ショックを思い出せば、今の買い入れペースにブレーキを踏むのにも、かなりの勇気がいるはずだ。
だから、量的緩和は長い長い時間をかけて巻き戻すしかない。

量的緩和なかりせば、マイナス金利がもう少し機能したと思うが、今となっては不安も大きい。
拡大した日銀・金融機関のバランスシートが低金利・マイナス金利に慣れきってしまうことは、将来の巻き戻しのモメンタムを大きくするだけだ。
迷うところだが、マイナス金利は早期に見切るという選択肢もあるかもしれない。

日本はすでに大規模な量的緩和を行っているから、財政拡大するだけで(広義の)ヘリコプター・マネーが完成する。
金利はもう少し高い方がいい。
政府がタダ同然で資金調達できる状況はヘリコプター・マネーを助長する。
こういう状況は健全とは言えない。