ジェフリー・サックス:ISを温存する米国の誤り

コロンビア大学のジェフリー・サックス教授が、Project Syndicateに「ISがなくならないわけ」と題する論文を寄せている。
米国人らしからぬ国際感覚・スクウェアな視点がすばらしい。

ISがなくならないのは西側にやる気がないだけ

サックス教授は《ISとの闘い》に潜む欺瞞を指摘する。
ISがシリアやイラクで生き延びる中、世界各国でテロが発生している。
シリアやイラクのISを叩くのが常道なのだが、長い時間がかかっている。

「ISを掃討するのは特に難しいことではない。
問題なのは、イラクやシリアに関与している米国とその同盟国の中に、ISを主たる敵としている国がこれまでのところないことだ。
今こそ、米国や同盟国はISを叩くべきだ。」

ISが大した敵ではないとはどういうことか。
サックス教授は数字を挙げて説明する。

「ISは小さな軍隊だ。
米国の推計では、イラクに20,000人、シリアに25,000人、リビアに5,000人に過ぎない。
一方、軍隊はシリア125,000人、イラク271,500人、サウジ・アラビア233,500人、トルコ510,600人、イラン523,000人。」

IS掃討のためなら、西側諸国は兵器の提供を惜しまないだろう。
人数でも優勢、火器でも優勢なのに、なぜISは掃討できないのか。
もちろん、中東諸国の中に掃討への参加への迷いがあるということもあるだろう。
しかし、サックス教授はより深刻な問題を指摘する。

アサド排斥は国連憲章違反

米国は、ロシアがアサド大統領を支援していると批判している。
ロシアは、米国がアサド大統領を失脚させようとしていると批判している。

「こうした批判の応酬は、一見対称のように見えるが、そうではない。
米国と同盟国がアサド大統領を失脚させようとしているのは、国連憲章違反である。
ロシアのアサド大統領支援は、国連憲章に基づくシリアの自衛権と矛盾のない行動だ。
アサドは暴君だが、国連憲章は、いかなる国にも、どの暴君を失脚させるか選ぶ権利を与えていない。」

明に暗に工作し、国家元首を生み出し、国家元首を追放するのは米国の専売特許だ。
いかなる暴君・犯罪者だろうが、自国に都合がよければ支援し、都合が悪くなればハシゴを外してきた。
こうしたやり方をサックス教授は痛切に批判しているのである。

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