土地への投資が有望でない理由

資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が、土地への投資について注意を喚起している。
株価指数・住宅価格指数の開発で知られるシラー教授は、この分野の実証研究の最高の権威と言える。

シラー教授はまず過去の地価の成長率を検証する。
市場の転換点が近いかもしれないともいわれる中では、近時を回顧するだけでは将来を占えないかもしれない。
教授のアプローチは、可能な限り長い期間事実を遡って、経済の変化を把握しようというものだ。
教授は、1915-2015年の100年間の米地価の上昇を見直している。

米地価の100年間の年平均上昇率
農地 1.1%
住宅地 0.6%
GDP 3.2% *

(注) 出典は1)。 *は統計が開始された1929年から2015年。

シラー教授が言いたいのは、長期で見ると地価の上昇率はGDP成長率よりかなり低いという点だ。
これは、ほとんどの人たちの先入観とは異なる。
なぜ、こうなったのか。
シラー教授は、広い意味での需要と供給の関係が効いているという。

  • 住宅地: 需要が伸びるのに応じて供給が拡大したために、価格が上昇しにくかった。
  • 農地: 農業技術の発達により面積当たりの収容が増え、実質的な供給力が増大した。

さらに、シラー教授は住宅地の本質について語る。
都市部や人気の住宅地に住む人たちにとって、土地とは住宅が与えてくれるさまざまなサービスのために買うものなのだ。

「家は、寝るためやモノを置くために買うのではない。
刺激的な仕事の場、いい学校、エンタメ、コミュニティの一部のために便利な場所だったりする。」

一方、高速道路・自動車・電話・通信はこの100年に大きく発展し、人々が地価の高い都市部に住まなくてもよくなった。
これも、地価の高騰を抑えてきたという。
さらには、いわゆるシェア・ハウスのような住宅のあり方が広まりつつあると指摘している。
こうしたさまざまな変化が、地価の上昇率を緩やかにしてきたという。
シラー教授は、過去数年の地価高騰にもかかわらず、このトレンドが次の世紀まで続いてもおかしくないという。

「もっと極端な結果だって十分ありうる。
100年の間、米国の農地の多くが野生保護区に戻ってもおかしくない。
実際、実質ベースの地価が現在の地価より低い可能性だって考えられなくはない。」

世界中の中央銀行が量的緩和を進め、不換紙幣の価値に疑問符がつく中、土地は実物資産の一角として人気だ。
しかし、実証研究の権威が、農地を含む土地を有望でないと言っている。
一貫して農地に強気を続けるジム・ロジャーズ氏は、こうした実証研究を見てどう考えるのだろう。

(出典)
1) Robert Shiller, The New York Times (7/15/2016), 「Why Land May Not Be the Smartest Place to Put Your Nest Egg」, http://www.nytimes.com/2016/07/17/upshot/why-land-may-not-be-the-smartest-place-to-put-your-nest-egg.html (参照7/16/2016)