早川英男氏が危ぶむハイパーインフレへの道しるべ

元日銀理事の早川英男氏が、2つの大きなうそを改めるべきと古巣に苦言を呈している。
財政再建が足踏みする中、軌道修正しないと、日本は最悪のシナリオへ進みかねないと警告した。

早川氏が問題視している「2つのうそ」とは

  • 早いうちに2%のインフレ目標が達成可能
  • 資産買い入れの手段はいくらでもある

の2点。
すでに審議委員の佐藤健裕氏や木内登英氏が問題提起しているように、インフレ目標の達成時期を柔軟化し、テーパリングせざるをえないことを認めるべきと話している。

早川氏は、今月28、29日の日銀政策決定会合で追加緩和が実施されると予想している。
もはや、日銀は、何もせずにインフレ目標達成時期を先延ばしできないという。
「18年度以降になると黒田東彦総裁の任期をまたいでしまう。ゼロ回答はやはり無理だ」からだ。

早川氏の2017年度インフレ見通しは「常識的に考えて0%台後半」。
しかし、日銀は「さすがに1%を割る数字は出せない」ため(政策委員の中央値として)1.2-1.3%あたりを出してくると予想している。
少々驚いた。
日銀という組織も体育会系の民間企業と同じように、日本の金融政策の礎となる経済指標を気合と精神論で予想するのだろうか。

調査統計局長も務めた早川氏は、日銀の内幕を明かす。
現時点で、調査統計局によるスタッフ見通しが、政策委員の中央値と乖離しているのではないかと推測している。

「時間がたつにつれ実現不可能なことが分かってくると、無理な数字を担当者に作らせようとしても誰もしない。」

金融業界には、日銀だけはという期待も大きい。
しかし、実体は、いずこも同じということなのかもしれない。
役人やサラリーマンと同じような自己防衛的な営みが常態となっているのだろう。
しかし、それにも限度がある。

早川氏が「うそ」というきつい表現を使って提言するには、切迫した思いがある。
そう考える一つの理由は、財政再建の遅滞だ。
早川氏は、2019年10月の消費増税の実施も定かではないとし、量的緩和の出口で「日銀にとってかなり困ったことになる」と語る。

早川氏によれば、仮に2018-19年にインフレ目標が達成したとすると、運命の分かれ道がやってくる。

  • 市場が財政の持続可能性を信じていれば、長期国債の買い入れをやめても大丈夫。
  • 市場が財政の持続可能性を信じていない場合
    • 長期国債の買い入れを止めれば、長期金利が急騰する。(この場合、金融機関や日銀の財務は壊滅的な影響を受けるだろう。)
    • これを恐れて買い続ければ、大幅な実質マイナス金利が継続し、「ゆっくりとインフレが加速し、円安が進む。インフレと円安のスパイラルが必ず起こり、めでたくハイパーインフレへの道を歩むことになる」。

ハッピー・エンドに確率を見いだせないのは筆者だけだろうか。

(出典)
1) Bloomberg (7/20/2016), 「日銀は2つの大うそ改める絶好の機会、追加緩和と同時に?早川元理事」, https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-07-19/OAJUBJ6JTSEJ01 (参照7/20/2016)