株主間契約やStand Stillの開示は十分と言えるか?

スズキとVWが提携解消に動いている。
そこで気になるニュースがあった。

これはスズキに対する非難ではない。
筆者はスズキの開示資料について、目を通したことはない。
あくまでも、あるニュースを見て、一般論的な感慨を得たものだ。
そのニュースは日本経済新聞が紹介したスズキ副社長の

提携解除後も我々の承諾なしにVWが保有する自社株式の買い増しや売却はできない

という発言だ。

上場株式を売買しないという約束は世の中に広く存在する

VWは議決権割合にして19.9%のスズキ株を保有している。
このニュースで明らかなのは、スズキとVWの間には提携契約があり、その中にスタンドスティル条項が含まれているということだ。
しかも、買い増しだけでなく、売却も制限している。

M&A実務から言えば、このような例は珍しいものではない。
出資を受ける側が(敵対的買収の回避も含めて)株主と安定的な関係を望む場合、このような約束がなされる。
いわば、無駄な心配を払拭し、実業面でスムーズに提携の果実が得られるようにした工夫だ。

この例とは異なるが、企業間の提携のために合弁会社の形をとることがある。
そのような場合、協業する株主間の間に提携契約を結ぶことが一般的で、その株主間契約の中に、合弁会社の株式を相手の承諾なく売買しないと約することがある。
これも至極まっとうな趣旨の約束だろう。
ところが、その合弁会社が上場している場合には少し微妙な印象を与えまいか。

一般株主から見たら部分的な「譲渡制限」のように見えないか

上記の2つのケースは、至極まっとうな趣旨の取り決めだと思う。
しかし、当該企業が上場している場合、一般株主からはどう見えるだろうか。
上場株式ではありえないはずの譲渡制限と似たような効果を持つ縛りがそこには存在している。
これが市場価格に影響を与えないとは言えまい。

もっとも、見識のある会社は、きちんとわきまえて対応しているかも知れない。
 ・売買を制限している契約の内容の開示
 ・株主間契約の場合、それら株主共同での大量保有報告書提出
などがあるだろう。
しかし、残念ながら、筆者はあまりそのような開示を目にしたことがない。
また、株主間契約の場合、合弁会社には契約内容が開示されない場合もある。
そのような場合、株主が自発的に開示しない限り、合弁会社側には開示のしようがないこともあろう。

世の中にはもっとたくさん売買が制限されているケースがあるだろうに、私たちはそれを知らされないでいる。
そんな大切なことも知らずに、株式を売買しているのだ。

日本株の信頼回復には一般株主への情報開示の徹底を

最近目にしみるのは日本株の低迷。
諸外国と比べても、日本株の評価は低すぎるように思う。
リスク回避で円が買われ、円債が買われるなら、これほど安い株も買われていいはずだ。
この一因には、日本の経営者への不信もあるのではないか。
その中の、悪意のない部分として、一般株主への開示の不足を切実に感じるのである。