【輪郭】物価水準の財政理論FTPLの基本のき

何をすればインフレになるか

政府債務評価方程式からインフレ誘導の手段を洗い出してみよう。
ここでは、インフレそのものであるPを目的変数とし、あと一つを変数、残りを定数と考えて、変数を動かした場合のPの変化を定性的に見ていく。

政府債務評価方程式
出典: John H. Cochrane論文

マネタリー・ベースMとPが変数で残りは定数の場合、右辺は一定になる。
だから、Mを増やすとPも増えざるを得ない。
こんな具合だ。

M マネタリー・ベースを↑ 物価↑
B 政府債務↑ 物価↑
R 政府債務の実質利回り↑ 物価↑
s プライマリー・バランスの黒字↑ 物価↓

金融政策だけじゃダメ

マネタリー・ベースを拡大すれば物価が上がるというのは、マネタリストの考えそのものだ。
日本の量的緩和の指導原理であり、その有効性もすでに判明している。
シムズ・エッセーでは、日米欧の金融政策が物価水準を目標まで引き上げるのに無力だったと総括している。

その理由は、政府債務の項にある。
物価を上昇させるのには、MではなくM+Bを増やす必要があった。
しかし、Mを増やす一方で、財政再建努力をしてしまったため、M+Bが十分に増えなかったというのがシムズ教授の主張なのだ。

借金は返すな

さらに、この式が教えてくれることがいくつかある。
政府債務の実質利回りを上げれば、インフレが上昇するというメッセージだ。
これを具体的に言い現わしたのが、返さずにインフレで減らせというシムズ教授の提案なのだろう。

プライマリー・バランスの改善、つまり財政の改善が物価を引き下げるとはどういうことだろうか。
シムズ・エッセーではこう書かれている。

「財政政策は、将来債務の利払い・償還をするためにいくらの実物資源があてられるかを決めることで、名目政府債務の投資としての魅力度に影響する。
将来プライマリー・バランスの黒字が増えると期待されると、名目債務はより魅力的な投資となり、需要は減少し、デフレ圧力を生じる。」

財政健全化がクラウディング・アウトの原因になりうることを言及したものと思われる。

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