安易な悪者論が国を傾ける

最近の金融危機・経済危機について、

米国の拝金主義の結果だとか
投資銀行の暴走のためだとか

喧伝する向きが多い。
言うまでもなく、表面だけを見た論である。
安易な悪者論は経済の再興の妨げとなりかねず、できれば人目に触れてほしくないものだ。

投資銀行暴走論については、今の経済を見てほしい。
リーマン危機直後において、経営難が伝えられたのは、多くが投資銀行だった。
しかし、それから4か月ほどたつと、経営難の主役は着実に商業銀行側へ移ってきている。
商業銀行が経営難に陥った場合の波及の広さ・大きさは、投資銀行のそれとは比べ物にならないほど大きい。
商業銀行のバランス・シート全体に経営破綻のリスクが及ぶことは、経済全体を壊滅させる危険を孕む。

では、商業銀行も投資銀行と一緒に暴走したものとして、悪者とするのか。
投資銀行が米国でのバブルの発生のメカニズムを担ったのは事実だ。
商業銀行もまた、それに加担していた。
しかし、だから、それらを悪者とすれば、事は終わるのか。
投資銀行・商業銀行に手を入れれば、経済は立ち直るのか。

事業会社はどうなのか。
今、事業会社は、続々と業績予想の下方修正を発表している。
ならば、そういう事業会社もまた、悪者ではないのか。
これら事業会社は、何かサブプライム関連資産のようなものに関与していたわけではない。
だから、悪者ではない。
そう言ってしまっていいのだろうか。

同じように、米国の住宅バブルを発生させたのは、米国なのか。
日本は悪くないと言えるだろうか。
決して、そうは言えまい。
極論を恐れず言えば、このバブルは、日本が米国に輸出したから起こったとも言える。
仮に輸出を悪とするなら、輸出産業やそれを支えた産業が悪ということになる。

日本が経常黒字、米国が経常赤字となれば、そのギャップを埋め合わせるために、日本が米国に投資をすることが起きても自然なことだ。
では何に投資すればいいか。
実際、日本は、あらゆる資産クラスに投資した。
しかし、日本の米国へのエクスポージャーが大きくなると、投資はしにくくなる。
リスクを恐れて、米国債を買うことが多くなる。
それで、まず、米国債の利回り低下が起こる。
他の投資先を探さなければいけない。
行き着いた先が、住宅公社債券だ。

経済危機の責任を、一部の企業や国に押し付けることは避けるべきだ。
そのような見方からは、再生への正しい論点は見えてこない。