克服すべき日本の2つのバブル(1)日本国債バブル

金融危機が、日本のいくつかの問題点を浮かび上がらせている。
ここでは、今、日本の中に現存する2つのバブルについて論じてみたい。

まず始めは、日本国債のバブルだ。
日本の国の借金は843兆円。
(出典: 財務省「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(平成20年9月末現在)」)
2007年度の日本のGDPは515兆円だから、国の借金はその1.6倍を超える。
(出典: 内閣府「国民経済計算確報(平成19年度確報)」)
昨今の経済低迷で歳入は減り、逆に、歳出は増やさざるを得ないから、国の借金は増えるばかりだ。

財政は悪化しても借金は増える

財政収支が悪化している中でも、まだ借金を増やすことは可能だ。
国債の市場消化が難しくなっているというニュースは伝わっているが、不可能というわけではない。
格付機関S&Pのソブリン格付で、日本の発行体格付は円建も外貨建もAA/安定的/A-1+とされる。
(出典: S&Pウェブサイト、2009年1月18日)
G8の中でAAAでないというのはやや恥ずかしいものの、AAであれば、すぐさま債券発行に支障を来たすというレベルではない。
(もちろん、短期金融市場が麻痺すれば、それは、別の要因としてファンディングが難しくなる。)

なぜ、借金まみれの日本国債が買われるのか。
しかも、円の長期金利は1.2%台とあいかわらず超低金利のままだ。
筆者は、以前よりこれを日本国債のバブルと呼んでいる。

理由は明白、数多くあろうが、主なものとして、
 ・日本国債を買っているのは、邦銀などの日本人
 ・日銀の低金利政策が信任を受け、市場がその意図に従っている
ということだろう。
前者については、米国債と対称をなすところだ。
米国債は外国人が買っているから、ひとたび売られだすとドル安をともなって市場が破綻しかねない。
一方、日本国債は、売られても、すぐさま円売り圧力になるわけではないので、国債市場と為替市場が同時的に壊滅するようなリスクは相対的に少ない。
いわば、相対的には買いやすい状況にある。

いろいろな要因はあるものの、実際のところ、日本国債の市場が問題なく推移する理由とは、市場参加者が市場を壊したくないということだろう。
なにしろ、ちょっとした「バブル」なのだから。
邦銀のバランスシートを見ていると、恐ろしくなる。
最近の邦銀は、あたかも、預金を集めて国債を買うメカニズムのようだ。
かつて、郵貯について同様の構図が問題視されたが、いつのまにか邦銀もそのメカニズムを構成するようになっていた。
日本人が買って、その日本人が損をしたくないから、日本人は売らない。

「日本の国債は日本の投資家が買っているから大丈夫」という人がいる。
今生きている世代は、本当にいつまでも将来の世代の負担分を先食いし続けられるのか。
これは、言わば、世代間での不公平な富の再配分だ。

このような状況は、収奪される側が、収奪されることに同意する限りは継続しうる。
しかし、
 ・今または将来、収奪される側の世代は、
 ・収奪する側の世代より、はるかに経済的に厳しい立場にある
ことも考えないといけない。
高齢者の世代は、過去の努力の結果として、今後、安定した福祉を受けられる。
これは正しい。
しかし、その原資が、深刻な不況、失業のリスク、終身雇用・年功序列の終焉の中で生きる世代の負担にあるとすれば、これは問題だ。

国債バブル崩壊はいつ起こるか

収奪される側が拒否をしたとき、日本政府の財政は破綻する。
では、「拒否」するというのは、どういうことが考えられるのか。
サラリーマンである以上、納税や社会保険料支払いを拒否することはできない。
個人として考えうる方法は、海外移住ということになる(あるいは非居住者になるということ)。
幸い、これは、一朝一夕にできる方法ではない。

一方、法人ならば手はいくらでもある。
企業活動の場を海外に移してしまえばよい。
今、起こっている円高ドル安は、それを後押しする。
日本企業の収益の源泉は、日本から失われていくだろう。
現在の円高は循環的なものではないだろうから、輸出企業が輸出以外に収益の源泉を見出せないなら、長期的に見ても、日本国内での経済活動は収縮してしまう。
結果、日本国内の法人税収は減少する。
ますます、国の財政は苦境に立たされるようになり、国債発行ができなくなったところで、デフォルトが起こるのかもしれない。

解決策は増税

最悪のシナリオを述べたが、一方の解決策も簡単だ。
増税だ。

日本の中で、国民が債権者・政府が債務者であるだけにすぎない。
国の資産・債務は、そもそも国民のものだ。
言わば、国の借金とは国民の「見えない借金」なのだ。
見えない借金を見えるようにすること、つまり、政府と国民の境界線を引きなおすことが解決につながる。
それは、国民から政府への富の移転、つまり、増税ということになる。

増税の議論をすると「まず、歳出を抑えろ」という話になる。
それは、正論だが、そう言う人たちの本心は悪意に満ちていることが多い。
「歳出を抑えろ」が増税阻止の道具にされてしまっている。
歳出の内容を厳選して、効果の高いお金の遣い方をするのは当たり前だ。
役人の中には、まだ意識が薄く、無駄なお金の遣い方をしている人も多いのだろうから、それを牽制することは正しい。
しかし、どんなに歳出を厳選しても、だから増税が要らなくなるというレベルではなくなってきていることにも気をつけないといけない。

最悪のタイミングの今、増税が議論される理由

増税のタイミングは難しい。
現在の深刻な景気低迷を考えれば、今、増税することは自殺行為だ。
さらなる景気の低迷を招いてしまう。
だから、政府・与党の増税論議も、中期的な増税を検討するにとどまっている。

なぜ、今、増税の話が表に出るのか。
不況は深刻化し、衆議院議員選挙も控えている。
最悪のタイミングだ。
ここに事の重大性があることに気づくべきだ。

この現象は、国の財政が「臨界点」に近づいていることを示しているのだろう。
国民の不興を買ってでも、今増税を約束しておかないと「臨界点」に達してしまう。
そういう事情があるのだろう。
「民主党に政権が移り、増税の議論が振り出しに戻ってしまっては間に合わない」というような、切迫した思いがあるなら、今増税を議論することにも合点がいく。

臨界点で引き起こされる危機

先に述べた「臨界点」とはどんなものか。
それは、金融市場の側から言えば、

【Phase 1】
・国債が市場で消化できなくなる
・円金利が急上昇する
・特に長期で国債価格が下落し、保有する金融機関で評価損が発生する

というようなことが起こることを意味する。

Phase 1では、国債を償還期限まで保有すれば償還はされるから、ここでとどまれば幸運だ。
より深刻な事態になれば、国がデフォルト状態になり、

【Phase 2】
・国の予算執行の一部ができなくなる
・保有する金融機関で実損が発生し、深刻な金融危機を誘発する

というようなことが起こるのだろう。

そして、忘れてはいけないのは、Phase 1においても、地方公共団体は深刻な影響を受けるだろうということ。
これまで暗黙の国家保証のもと発行してきた地方債が発行できなくなり、Phase 1段階でも予算執行が不可能になってしまうだろう。

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