克服すべき日本の2つのバブル(2)雇用バブル

日本の雇用が揺れている。
まずは派遣社員らが犠牲となっているが、今後は正社員へ及ぶことも必至だ。

日本経済が、大きな構造的な変化を余儀なくされている今、日本の雇用についても論点をまとめておこう。

人材派遣とは何だったか

人材派遣はなぜ小泉内閣で規制緩和を受けたのか。
お題目を言うなら、
 ・労働者にとっては、多様な働き方の提供
 ・企業にとっては、人件費の変動費化
ということになる。
なるほど、双方にとってメリットのある話のように聞こえる。

短期的な問題点を言うなら、このメリットが景気低迷期にWin-Winとならないことだろう。
景気低迷期には、
 ・企業は、変動費になった人件費を削減する=派遣社員の契約を解除する
 ・労働者は失業し、多様な働き方を選ぶ余裕もない
ということが起こる。
つまり、企業側だけメリットを取り続けて、労働者側のメリットは消滅してしまう。
だから、ルールどおりに運営されていても社会問題化する。

この問題を大きくしたのは、正社員と派遣社員の待遇格差だろう。
同じ仕事をやっても、正社員の方がいい待遇を受けてきたという背景があるから、問題はより大きくとらえられることになる。
なぜ、このような差別を生んだのか。
言うまでもなく、企業側が人材派遣を「実質的な賃下げ」に利用してきたからである。
下方硬直性の強い人件費というコストを引き下げるのに、派遣社員を利用したのだ。

賃下げなくして日本人の競争力維持はない

では、なぜ、賃下げが必要だったのか。
それは、日本経済が成長する中で、円という通貨が強くなり、その分も日本人の人件費が上がったからだ。
かつて1ドル360円だった円も、今は1ドル90円。
為替だけで、対ドル4倍もの増価を遂げている。
この1?2年だけを見ても、1ドル120円から90円に円高が進んだ。
円建の給料が変わらなくても、ドル建では33%増となったわけだ。

このような円高にともない、日本人の労働者としての国際競争力は低下せざるを得ない。
仕事が減りつつある中、2年前より33%増のパフォーマンスを上げろといわれても、(これまで手を抜いてきたのでもない限りは)そうはできない。
ならば、人件費を下げるしかない。

雇用バブル

賃下げをネガティブに捉えることはない。
これまで、円は実力以上に安かった
その円安バブルの中で、日本の労働力・雇用までもがバブル的な状況にあったと考えるべきだ。
今は、その揺り返しが来ているだけのことだ。

雇用バブル消滅の大きな特徴は、そのきっかけとなった経済低迷の深度が大きかったこと。
これによって、緩衝材の役割を担っていた派遣社員の層がすべてはがれてしまった。
残るは正社員だけとなった。
次は正社員だ。

雇用バブル崩壊は差別撤廃へ向かうか

人材派遣の問題点がクローズアップされ、人材派遣という仕組み自体が大きな見直し・縮小に向かうのが避けられない。
問題があるのだから、そうなることは当たり前だ。

結果として、正社員と派遣社員の間の差別がなくなることを望みたい。
あるいは、正社員と派遣社員の間の関係では、
 派遣社員はリスクが大きいのだから、正社員より待遇がいい
というような、リスク?リターンにあった関係になることを祈ろう。

ただし、このような是正が今のような買い手市場で起こるとは思えない。
かと言って、売り手市場がいつ訪れるのか、まったく目処もたたない。

希望的観測を述べるなら、
 ・既存の従業員を守るために、派遣社員を差別的に処遇する企業は、
 ・主たる人材採用の手段として、新卒採用しか持ちえず、
 ・変化に乏しい組織の中で、正社員の競争力は鈍り、
 ・企業としての競争力も低下してしまう。
というメカニズムが発生しうるかもしれない。

人の資質・能力は硬直的

賃下げだけが問題の本質ではない。
むしろ、労働者の資質・能力が、労働市場の需要に合致しているかが重要だ。

円高が構造的なものであるとすれば、輸出産業、そこから恩恵を得ていた産業は、大きな縮小を逃れられない。
日本の産業構造は、今後、大きな変化を遂げざるをえないだろう。
次の世代の日本産業と、今の労働者の資質・能力は合致しているか。
100%に近づく高校進学率、50%を超える大学進学率は、大きすぎるのか、少なすぎるのか。
理系の学生は少なすぎるのか、多すぎるのか。
このようなミスマッチを、国境を越えて融通しあうべきなのか。

気の遠くなるような課題だ。
お金でかたがつく経済バブルの方がまだ楽だ、と思えてしまうほどではないか。

(1)日本国債バブル