世界で治安が悪化する背景

インドやタイなど、経済的にも馴染みの深い国々で、これまでとは少し違った治安の悪化が散見される。
このような治安の悪化は何によるものなのか。
もちろん、ケース・バイ・ケースと考えるのが正しい。
ある時は宗教であろうし、ある時は政治であるかも知れない。
しかし、このような「不適切なエネルギーの噴出」を将来振り返って見たとき、近視眼的な説明とは異なる解釈がなされるのかも知れない。

政治的な対立にせよ、宗教的な対立にせよ、それが尖鋭な発露を遂げるとき、多くの場合「貧困」といったような遠因がある。
そのような原因が、名前を変えて社会に発現することがある。
今回の場合、そのような遠因は、言うまでもなく金融危機によって顕在化した世界的なリセッションであろう。

発展途上国が豊かになる過程において、中流階級の豊かさが増すことが起こる。
人間は豊かになると、その記憶が離れることはない。
豊かになった人たちに、再び貧しくなれと言っても、あまりにも酷だ。
日本もそうだった。
極めて稀な例外を除けば、消費は常に前年を上回る。
景気が悪くても、消費が前年割れすることはめったに起こらない。
それが、今、起ころうとしている。

治安の悪化を見ている国々は、なおさらだろう。
近年の急速な成長によって豊かになった中流階級が、深刻な踊り場を経験する。
豊かさが失われるという危機感を持てば、その人たちは、憤りの発露を求めて枠組みを踏み外す。

治安の悪化が、仮に公正さを醸成するのに役立つなら、歓迎する場合もあろう。
しかし、必ずしもそうとは限らない。
逆の場合の方が多いといった方がいいかも知れない。
いずれの場合も、経済活動にはマイナスとなるのが通常だ。
経済へのマイナスは、対立をより深くするから、負のサイクルに陥ってしまいかねない。

世界の人たちが平静を取り戻すのはいつになるのか。
各国政府の責務は重い。