【グラフ】日本株急伸のきっかけ

日本株のリスクは何か。
アベノミクスは円安を大きな武器として経済にテコ入れをした。
結果、日本経済が海外経済や為替に依存している構図に改善は少ない。
現状の世界経済・為替水準なら問題はないが、世界経済・市場に変調が起こり100円を割り込むような円高となれば、リスク顕在化は逃れえない。
ただし、程度の問題でこそあれ、こうしたリスクはどんな状況でも不可避のリスクだ。
これを甘受できないなら日本株への投資をあきらめるしかない。

もう一つ重要なのは、好調な企業収益もIMFの上方修正も現状は足元の話でしかないことだ。
IMF見通しは足元について高々プラス0.1-0.2%の修正でしかない。
これを大きく上回る企業収益の改善が永遠に続くものでないのは明らかだ。
経済全体の上方修正が高々プラス0.1-0.2%でしかないのに対し、最近の株価上昇が妥当なものかとの疑問は残る。

これを正当化するには2つの考えがありうる。

  • 1990年前後のバブル以降アンダーシュートを続けてきた日本株について、投資家のトラウマが取り払われた。
  • 経済全体は大きな改善でなくても、労働分配率の低下によって企業収益が恩恵を受け続ける。

後者は政府の意向と反する仮定であり、政治面も含めて予想の難しいところだ。
前者については、心配な点がある。
11月第3週(13日-17日)の投資部門別売買動向に大きな変化が見られたことだ。

  • 海外勢: 7週続けて買い越していたが、売り越しに転じた。
  • 個人: 9週続けて売り越していたが、買い越しに転じた。

9月下旬から日本株を買っていた海外勢が利益確定に入っており、個人投資家がその受け皿になっている。
これが、日本株の本格上昇を示すかどうかは意見が分かれるだろう。
事実として言えるのは、日本株が四半世紀来の高値圏にあるということ。
株式投資の基本は「Buy low, sell high.」であり、高値圏では買うのではなく売るのが基本だ。
問題は、四半世紀来の高値圏が将来の高値圏なのかということ。
この疑問に対する上げ相場でのタクティクスについては「【輪郭】上げ相場とリスク・パリティ戦略」を参考とされたい。


阿久津 り子 大手電機メーカー、公的研究機関にて電気・電子分野の研究開発に携わった後、浜町SCI調査部にて技術・計量分析を担当

本コラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。本コラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。本コラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。本コラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。本コラムはコラムニストの見解・分析であって、浜町SCIの見解・分析ではありません。