【書評】バブルリゾートの現在地 区分所有という迷宮(吉川祐介 著)
ブログサイト「限界ニュータウン探訪記」の中の人、吉川祐介氏がリゾートクラブ、リゾートマンション、別荘地の一部で起こっている現実を紹介した本。
バブル崩壊前、日本で不動産神話が固く信じられていた時代に主に投機目的で分譲された、いわゆる「限界ニュータウン」を取り上げたサイトだ。
本書は、同じような時代に販売されたリゾート施設について掘り下げている。
昨年上梓されたものだが、むしろ提起された問題は今も深刻化しているように思われる。
正直に言うと、筆者はブログサイト「限界ニュータウン探訪記」の読者ではない。
そこから派生したYouTubeアカウントの視聴者だ。
どういうわけかYouTubeのトップページで推薦されたので何の気なしに見たのだが、すっかり引きつけられた。
以来、公式アカウントや他アカウントでの出演を含め、数十本のビデオを見ていると思う。
著者の吉川氏は高校卒業後、新聞配達員やバス運転手などとして勤め、勤め人の時期に趣味で限界ニュータウンのことを調べ始めた(そんな感じのことをYouTubeで話していた)。
ブログがバズり、作家・講師など、この分野の専門家として活躍されている。
今では大学の教授や弁護士の先生などと議論を交わしているのだからすごいことだと思う。
吉川氏のビデオに引きつけられた理由は、きちんと情報を取り、広角の議論をしている点だ。
単に林に戻った分譲地や廃墟と化した建屋を表面的に紹介するような安っぽいアカウントではない。
きちんと登記簿謄本や公図を見て、必要なら役所で聞き取りをする。
新聞の縮刷版をめくり、数十年前にその物件がどのように販売されたのかを調べる。
そして、淡々とだが常識的で時としてユーモアを交えた解説・意見表明がなされるのである。
取り上げられた事例の多くは悪徳業者(ほとんどがすでに消滅)による分譲・運営だが、中には悪意のなかった事業者(多くが破綻)もあったようだ。
紹介が長くなったが本題の著書『バブルリゾートの現在地』(リンクはAmazon)の話に移ろう。
10万円の物件は、別に売主が10万円の現金を欲しているのではなく、需要が極めて限られているために、捨て値で手放すという意思表示として呈示しているに過ぎない。
・・・ただそのマンションの『引取り手』を探しているだけの状態である。
読者もすでに聞いたことがあるだろうが、苗場周辺のリゾート・マンションについての記述である。
(次ページ: 区分所有よりも怖い共有)
