【書評】日銀、出口なし!

東短リサーチ 加藤出氏による異次元緩和についての論考。

日銀の量的緩和政策の問題点が網羅的に説明されている。
ダラス連銀リチャード・フィッシャー総裁の

我々はホテル・カリフォルニア的金融政策のリスクに瀕している

という発言を紹介して始まる。
量的緩和とは終わるに終われない政策であるとの警鐘である。

昨年7月発行の本。
10月の突然の追加緩和よりも前に書かれているのだが、今こそ読むべきタイミングなのではないか。
インスピレーションを掻き立てられるところを2つ紹介しよう。

高橋是清の量的緩和政策

安倍首相が「私を勇気づけてやまない先人」と呼ぶ高橋是清。
高橋が行った量的緩和政策が詳説されている。
緊急避難的政策だったはずの量的緩和政策が常態化しそれが財政規律を弛緩させていく様子を当時の事務次官や大臣の回顧によって紹介している:

世間では初め非常に心配して、こんなことをしてえらいことになるのではないかと相当議論の的になっておったのが、これは簡単にできるよい制度だというような空気に変わってまいりました。
世間はそれに慣れてしまって引受け制度はあたりまえ、本来かくあるべきものだと考えておりました。
・・・
(予算請求で)その場限りの便乗主義がはやりまして、なんでもこちらにとらなければ損だ。まずは自分のほうに政府から金をとらなければ損だという考えになり・・・

高橋是清は経済の回復度合いを見極め、量的緩和の出口を模索した。
国債発行を絞るために歳出、とりわけ軍事費の削減を打ち出す。
その結果は、2.26事件である。

今年度の一般会計予算は96.3兆円。
言うまでもなく過去最大だ。