【解説】「最後のひと上げ」予想

ひと上げは終わったというリスク・シナリオ

投資の世界で1つのシナリオにしがみつくのは危険だ。
リスク・シナリオについても考えておこう。
「最後のひと上げ」が今回はやってこない、あるいは、すでに終わったというシナリオだ。
これは相応に説得力のある見方でもある。

「最後のひと上げ」は往々にして素人投資家が主導するというのは先述のとおりだ。
フィッシングを行うものが、素人の熱狂を煽るとも書いた。
この熱狂がバブルを大きく膨らませていく。
そして今、バブルとのコンセンサスを有するものがある。
仮想通貨である。

ガンドラック氏は、仮想通貨を市場の熱狂のバロメーターとし、2000年のドットコム株と仮想通貨を並べている。
今回の素人主導の熱狂とは、昨年後半の仮想通貨ブームだったかもしれない。
そうだとすれば、もはや株式に「最後のひと上げ」はないのかもしれない。
今からコモディティを、いやそれさえ遅いかもしれないのだ。

日本株は分が悪い

最後に、日本株市場についてコメントしておこう。
適度で大きな円安(1ドル120円+)でもない限り、日本株が米国株をおいて勢いよく上げる可能性は小さい。
現時点で120円+の円安は考えにくい。
もしもそうなれば、トランプ政権のドル円相場への風当たりは厳しくなろう。

米国株が勢いよく「ひと上げ」するなら、日本株にもチャンスがあるかもしれない。
ただし、その後の展開には要注意だ。
次の景気後退期、日本のおかれる状況は厳しい。
金融緩和や財政政策の余力は小さく、円高となる可能性も高い。
分散投資のための(コモディティを含む)外貨資産も、円高によって円建て評価額を下げてしまうかもしれない。
日本株からの逃げ方について工夫が必要となろう。
(日本の場合、いまだゼロ金利なので、現金保有が現実的だろう。)

もう1つ日本独特の点を加えるなら、ミセス・ワタナベと言われるように、日本では為替を好んで売買する投資家が多い。
昨年後半の仮想通貨ブームで、日本がトップ・シェアと推計された背景にも、FXから仮想通貨に流れた投資家が多かったためと推測された。
バブルには濃淡がある。
仮想通貨には、日本株や伝統的為替取引から熱狂を奪う効果があるかもしれない。
仮にそうだとすれば、日本株の「最後のひと上げ」は、やや熱狂を削がれた控えめなものになってしまうかもしれない。
そうであればなおさら、そのリスクを取るべきかとの損得勘定が必要になろう。

投資

前の記事

【グラフ】東証一部のCAPE
経済

次の記事

時価を語れない経済学